科学・技術と自然環境について、教育を考える。
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安倍政権の奢り-危険な「共謀罪」
安倍政権の奢り-危険な「共謀罪」

最近の安倍政権のやり方は唖然とする。

 森友学園のことでは、右翼的教育を熱心に支援していたのに、籠池園長の誤魔化しや国有地売却問題が明るみにでると、手のひらを返すように態度を変えて鴨池批判・攻撃を始めた。自民党は鴨池氏を「国会証人」として呼び出して脅そうとした。裏切られた鴨池氏は居直ってすべてを打ち明けた。

 慌てた政府・自民党は、今度は重箱の隅をほじくるような些細なことを取り上げて「偽証罪」で脅そうとする。肝心の土地売却の9億円問題や、安倍晋三氏から森友学園への100万円寄付問題などは棚上げして、知らぬ存ぜぬである。証人喚問には一切応じない。正に権力を笠にきた弱いもの虐め、やりたい放題である。些細な「偽証」の調査にエネルギーを割く時間があるならば、国有地売却の不正問題を調査すべきである。国有地は国民の財産であるから、この疑惑の調査と結果の公表は政府の義務である。だが、安倍政権は絶対やろうとしない。これらは安倍政権の傲慢な奢りである。

 国会の絶対多数にあぐらをかき、自分に不利なことには権力によって蓋をし、弱いもの虐めをする。都合が悪くなると手のひらを返すように、平気で剽窃する。こんな政府の下では「共謀罪」(「テロ等準備罪」)が成立したら、危険極まりない。政府の都合のよいように、どのように拡張解釈して国民弾圧に使われるか分からない牽強付会的な憲法の拡張解釈で自衛隊の海外派遣をする安倍政権である。

専門化の解説を読むと、この「共謀罪」は曖昧な点が多く、政府と警察の解釈次第で拡張適用される危険性が強い。政府側は一般市民へは及ばないよう歯止めがあるというが、そんな言い訳は状況次第ですぐ反古にされることは、これまでの政府のやり方を見ればあきらかである。かって戦前の「治安維持法」が、ひどく拡張解釈されて猛威を振るったことが思いだされる。「共謀罪」それと似ているように思えて脅威である。

 秘密保護法-共謀罪 と立て続けにでてきた。次は昔の「治安維持法」とくるだろう。「共謀罪」の危険性を訴え、国をあげて反対せねばならない。

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「軍学共同研究」に対する学術会議検討委員会の「新声明案」 
「軍学共同研究」に対する学術会議検討委員会の「新声明案」              

  「軍学共同研究は是か非か」について学術会議で熱心に議論されてきた。また、学術会議以外にも新聞紙上での討論、また各地(大学)でこの問題について講演会や討論会がなされ、関心は非常に高まった。学術会議の討論では軍学共同研究に反対する意見が多かった。これらの議論から改めて多くにことを学んだ。関係者の熱心な討論によって議論はかなり深まり、その結果「安全保障と学術に関する検討委員会」(委員長 杉田敦法政大教授)が声明案を決めた。この声明案は学術会議の総会にかけられ承認されるだろう。

 その骨子は、学術会議が戦前の反省を込めて、戦後に出された「軍事目的の研究は行わない」との学術会議の声明を継承すること。さらに、防衛省が創設した安全保障技術研究推進制度は、兵器開発につなげる目的を持つものであり、防衛装備委託研究は、政府介入の度合いが強く問題が多いと、強く批判した。そして、大学や学会にも倫理審査や指針整備などによる慎重な対応を求めものであった。

 昨年、防衛省は軍事研究を大学・公的研究機関と共同で行うことを強く打ち出し、そのための研究予算を急増した。2016年度の6億円から、2017年度は一挙に110億円とした。この動きは武器輸出の解禁と連動していることは明らかであろう。この防衛省の動きに対して、いち早くその危険性を察知して「反対声明」と、大学研究者の応募にストップを呼びかけて、運動をはじめた「軍学共同反対の連絡会」(代表 池内了氏)のメンバーに敬意を表したい。

 軍学共同に関する賛否の議論の焦点は、戦前の反省を込めて1950年に学術会議が行った決議「戦争を目的とする科学の研究はしない」を認め継続するか否かである。そのさいの議論の主な問題点は3点である。(1)ほとんどの技術は平和・戦争のいずれにも使えるという「デュアルユース」の問題、(2)研究成果の公表の自由性(3)防衛のための軍事研究ならよいか。

 国公立大学が独立法人になってから、大学の教育・研究の経常費は年々減少し、教員は外部から研究費を獲得しなければ苦しい状況に追い込まれている。研究能力よりも資金獲得能力のある者の方が優遇され発言力も強くなっている。独立法人化は文部官僚の天下り先を増やすためばかりでなく、軍学共同研究に手を染めざるをえない状況に大学教員を追い込んでいる。
 政府・防衛省の意図と目的からして、この軍学共同研究は軍事目的の研究推進であることははっきりしているだろう。 防衛省は「研究成果の公表を制限することはない」といているが、「完全自由」とは言わず歯切れが悪い。

技術の「デュアルユース」や「防衛のための軍事研究」などは考えが甘すぎるだろう。戦争に防衛と侵略の明確な区別などない「デュアル」である。 防衛のためとか、非軍事目的とかが問題ではなく、資金の出所が問題であって、いざとなったら国家権力の介入により軍事研究優先となる。要するに、いくら言い訳をしても、防衛省の研究資金ならば、主導権は防衛省にあることは明らかである。いったんその資金に依存したら、アルコール依存症のようなもので、その依存から抜けられずやがて心身ともにコントロールされていくだろう。そのとき資金を断たれたなら研究不能となる。そのことは軍事に限らず、また古今東西を問わず歴史の示すところである。特に有事の時の軍の権力の恐ろしさに思いを致すべきである。

 例えが大げさかも知れないが、この軍学共同研究に応募する研究者に対しては、悪魔に良心を売ったファウスト博士の運命が思い浮かんでくるのである。それは杞憂といえるだろうか。戦中に軍に協力した(良心的な)科学・技術者の戦後の反省と苦悩を、間近に見てきた私には杞憂とは思えない。
 
 アメリカの軍事研究費を東大、京大がすでに受け取っていることが報道され驚いた。日本で最も予算の多い両大学ですら、研究費が不足しているからだろう。かってアメリカの研究者は陸・海軍から研究資金(グラント)を受け、比較的自由に基礎研究などにも使われていたが、ベトナム戦争でアメリカ経済が疲弊すると予算不足となり、軍からの研究費が途絶えて軍事研究に協力させられたり、研究が継続できなくなった例を思いだす。

 「軍学共同研究」に対し反対意見が盛り上がり、すでに反対声明や、防衛省のプロジェクトへの応募に反対であることを決めた大学もある。再び過ちを犯して苦い思いを繰り返さないことを願う。今こそ科学者の良心と社会的責任が問われている。
囲碁ソフトは行動の「意味」を理解できたか 
囲碁ソフトは行動の「意味」を理解できたか 

 囲碁ソフトAlphaGoが世界のトップ棋士李セドルに圧勝して世界をあっと言わせてから、一年も経っていないのに、深層学習(Deep Learning)を取り入れた囲碁ソフトがいくつか開発された。日本で開発された DeepZenGo が趙治勲名誉名人と対局し1勝をあげた(対戦成績2:1)。これも,トップ棋士にハンディなしで1勝をあげたと、大変な話題になった。

 最近ネット碁でAlphaGo の進化版として、ハンドルネーム「Master」がトップ棋士を相手に無敵の強さを誇っている。今やプロ棋士たちは囲碁ソフトの打った新手を真似るだけでなく、囲碁の考え方まで再考を促されているところまできた。 

 これまでの囲碁ソフトは、定石や膨大な棋譜をひたすら記録し、そのデータを基に深層学習法によって帰納的に法則を学習するというものであった。しかし、最早その域を超えて、自らの着手を編み出しているようだ、と伝えられる。以前は、プロ棋士には思いつかない着手、打てない着手(疑問手)を打ってAIが勝ったので驚かされた。だが、Master の対局棋譜では、プロ棋士が感動させられる素晴らしい手が打たれているそうだ。もう棋士の棋譜から学ぶのではなく「人間の棋譜を介さずに、AI独自の強化学習で飛躍的な棋力の向上を試みているように思える。」(朝日新聞2月2日夕刊)。 

 ここまでくると、AIは質的な進化を遂げているのではないかと想像される。AIの囲碁ソフトは人間の棋譜(1次情報)を基にした深層学習によって、ある程度高いレベルの規則性(法則性)を自ら編みだし、2次的データとして蓄積しているはずだ。その蓄積されたいろいろなデータ(2次情報)の量がある閾値を超えると、それら2次情報のデータを組み合わせた着手を打つようになるだろう。すると前に入力されたデータ(1次情報)から離れだす。すなわち2次情報をもとに深層学習をするようになる。そのように「進化」したAI同士で何万、何十万局も対局を重ねれば、人間の棋譜に頼らないAI独自の法則性(囲碁理論)を編み出すこともできるだろう。AIの囲碁ソフトはその域に達したのではなかろうか。勝敗だけの問題ならば、最早、AI囲碁ソフトは人間を超えた。 

 AIの評価として指摘されてきたことは、いかにAIの機能が進歩し人間に勝てても、またロボットが人間相手に上手く応対できても、AIには「自分のしているその意味が分かってない(理解していない)」ということである。機械的に無意識に反応しているだけで、その意味を理解してないというわけである。

 そもそも「意味が分かる」とはいかなることなのであろうか。「意識とは何か」がまだよく分かっていない。
しかし、生物(高度に組織化された物質系)のごく初歩的な意識は、少なくとも次のように規定できるだろう。最初に発生した「原始的意識」とは、生物発生から間もない進化初期の生物が無意識的行動(食物摂取、光に対する反応など)を繰り返すうちに、徐々に芽生えた目的達成のための物理・化学的機能の一種といえるであろう。

 すなわち、意識を「組織的物質系の物理・化学的運動による機能の一種」と見るならば、「意識」(生物の原始的意識も含めて)とは、一つの物質系がある目的(餌を採るなど)を達成するための行動に際して、その内部に蓄積した情報を統合的に活用する内的機能(行動の起動因)といってよいだろう。ただし、原始的意識の発生過程で、どこからが「意識」といえるか明確に定義することは今のところ難しい。  

 もしこのように意識を定義できるならば、囲碁ソフトMaster も「自己の行動の意味を理解する」という意識を持つたといえるだろう。最初は人為的に仕込まれた棋譜データ(1次情報)を基に深層学習によって無意識的な着手を繰り返していた(反応していた)囲碁ソフトが、習得したデータ(2次情報)の蓄積がある閾値を超えると、AIは独自に2次情報から囲碁に勝つための高次の学習を始めることも起こりうる。その場合は、囲碁に勝つことを目的とする行動を始めたといえるであろう。

 囲碁ソフトは打ち終わった(あるいは中途の)段階でゲームの勝敗を判定できるように、最初から作られている。勝てないと判定したら中途で投了することもある。すなわち「ゲームに勝つ」という目的は決まっている。そして勝つための着手を選択するように仕組まれている。すなわち「目的は何か」は決まっていて、それに向かって行動している。

 蓄積された2次的内部情報を統合して、目的のある行動をするということは、自らの行動の「意味」を理解したといえるのではなかろうか。チューリングテストに掛ける価値があろう。

人工知能(AI)の可能性:人間思考の盲点の発掘
人工知能(AI)の可能性:人間思考の盲点の発掘

 AIの能力は素晴らしく進み、特殊な個別分野では人間を超えるようになった。そして、AIは人間の知能をいずれは超えるだろうとの予測があり、その時点を「シンギュラーポイント」と呼んでいる。だがその「人間の知能を超える」という判断には問題がある。その理由は、人間の能力を完全に知ることは不可能だからである。なぜならば、人間が人間を探究する論理は「自己言及型の論理」であるゆえに、ゲーデルの不完全性定理によって、そのような理論は原理的に不完全であり、自己完結的理論となりえないからである


 近年の脳研究で未知の領域が広がり、人間の意識の奥深さ、複雑さが改めて認識されている。それゆえ、人間の能力を知り尽くす事は不可能であり、AIが人間を超えたか否かを判定することも不可能であろう。

 今の深層学習(Deep Learning)は、学習目的の分かっている特定分野の問題について多量のデータを記憶させて、反復経験により帰納的に学習するものである。それゆえ、深層学習のソフトは個別分野適用のソフトであり、人間のように、多面的に総合的判断ができる汎用性AIではない。汎用性AIのソフトを開発する論理と方法(それは演繹的推論の論理)はまだ未知である。まして新たな物事を創造する能力を有するソフトの開発は難しい。創造性機能を有するためには、現在実行していることの意味(何のための計算か、ゲームの楽しさなど)を理解しなければならないが、コンピューターにはその意味を理解できない。したがって、人間の能力に「迫る」あるいは「超える」ようなAIを開発することは今のところできない。 

そこで、それよりも現時点でAIにとって可能性の高い開発分野は、「人間の思考形式の盲点」となっているところを発見することであろう。人間の思考形式(発想)は決まったものではなく、東洋と西洋で、あるいは民族により異なるし、また時代とともに発展進歩してきた。論理学にしても弁証法論理や形式論理がある。特に形式論学は古代から、名辞論理(三段論法)、命題論理、述語論理など次々に開発されてきた。今後も新しい論理が誕生するだろう。それゆえ、現代人の思考形式はまだ不十分で、未知の論理があるはずだ。つまり人間の思考や発想には盲点があるだろう。地球外の高等生物は我々とは異なる論理思考を持っているかも知れない。 

 現に、将棋や囲碁の対局で、人間には思いつかない着手が飛び出して、驚かされている。しかもそれで勝っている。トップ棋士が、ゲ-ムソフトを使って研究するのは人間の盲点を指摘されるからだという。人間は最初からこの手は駄目だと思って読みの対象から外してしまうものがある。しかし、コンピューターは愚直にすべての可能な手を読み尽くすので、人間が見落としていた思わぬ応手によって盲点を突かれることがあるという。
 
 単一分野の深層学習ソフトでも、このように人間の盲点の発見に繋がる。それゆえ、複数の分野の深層学習ソフトを並列に繋げば、更なる人間思考の盲点や隙間を発見することができるだろう。メモリー容量が許すならば、種々の分野の深層学習ソフトを並列処理したもう一段階高い深層学習ソフトで繋げば、ある程度の汎用性のあるものができ、きっと新たな発見があるはずである。

 しかし、問題は何が人間の盲点かを判定する基準と、それを拾い出すプログラミングの開発である。人間がコンピューターの反応全部を終始監視し続けることはできないから、それをコンピューターにさせるのである。このレベルではコンピューターの応答(動作)のほとんどのものは、ソフトを作った人間の期待に応える常識の範囲であろう。それら応答の中で異常と思われるものを取り出して、それが人間の盲点を突き、かつ有効なものと判断できるプログラミングを作らねばならない。それができるコンピューター同士でシミュレーションをするなら面白いだろう。 囲碁、将棋のようなゲームの場合は、盲点であることの判断は比較的し易い。しかし、一般の社会的現象ではその判断基準は簡単ではなかろう。

 だが、この種のソフトの開発は、「創造的ソフト」の開発のヒントを与えてくれるだろうから研究の価値があると思う。
政治におけるカオス現象-多数決制の危機
政治におけるカオス現象-多数決制の危機 

昨年2016年は世界の情勢が大きく舵を切る予兆の現れた年だった。その予兆とは、一つには世界政治の方向転換であり、二つには民主主義的多数決制への疑問である。
 それを示した代表的事象は、「EU(欧州連合)離脱」の可否を決定するイギリスの国民投票、およびアメリカの大統領選挙である。いずれも賛否相半ばするきわどい接戦であった。


 イギリスの「EU離脱」を決めた国民投票は、初期の予想を覆して、接戦の末EU離脱派が辛勝した。だが、開票後に離脱派のリーダーが、宣伝していた前言を翻すなどで混迷があり、さらにこの結果が世界の政治・経済に与えた影響の大きさに驚き戸惑い、英国民は後悔しているかのような状況も報じられた。投票をやり直せという運動も起こったほどである。
 イギリスのEU離脱は、EU自体の弱体化ばかりでなく、イギリス経済にとっても難問を抱え込んだことになろう。その影響は、今後とも世界情勢を左右しかねない。EU離脱の賛否は完全にイギリス国内を二分し、投票結果がいずれに転ぶかは一寸した風向き次第といえるほどであった。しかし、イギリス一国の中のわずかの意見差が、将来の世界情勢に与える効果は予測できないほど大きいだろう。EUがしっかり結束していて強力であればその反響は少ないが、経済的に弱体化している時期ゆえに、下手をするとEU崩壊を招く恐れがある。この状況はまさに「政治におけるカオス現象」である(注)。 
 
トランプ大統領の出現も、初期の予想に反した接戦の結果である。獲得代議員数にはかなりの差があるが、それは選挙制度によるもので、全国の投票数ではクリントン氏が僅かに多かった。この結果は国内の意見が完全に二分したことを示している。この選挙での逆転は、アメリカ国内で既成政党の政治への不信・不満が蓄積し爆発したと見られている。その言動にあれほど批判の強かったトランプ氏であるが、国内の不満を取り上げ極端なアジテーションで国民の心を掴んだわけである。この結果は選挙を通してのクーデター(あるいは一種の革命)である。トランプ氏とクリントン氏のいずれが当選するかで、アメリカの国情が、ひいては世界情勢までもがらりと変わるだろう。すでにトランプ氏の独断的政治方針、組閣人事に見られるように、世界の政治・経済が混乱する予兆は現れている。それゆえ、これも政治におけるカオス現象である。

 社会的カオス現象は、国内が二分されるなどして、背景の環境が不安定な状態にある時に現れる。僅かの意見差や擾乱が拡大されて非常に大きな効果をもたらす不合理な現象である。近年は経済格差の増大、政治的閉塞、テロなどで、全世界がが不安定な状態であるから、政治・経済的カオスは、全世界に及ぼうとしている。
 咋年はイタリアで憲法改正の是非を問う国民投票を12月実施 。上院の権限を弱めて事実上の一院制にすることで、政権与党は改革を進めやすくしようとした。レンツィ首相は憲法改正案は承認されると踏んで、否決された場合には辞任する意向を示していた。だが、予想外の景気減速や英国のEU離脱決定による衝撃などを背景に状況は一変し、否決された。オーストリアの大統領選挙では移民排斥の右翼候補が勢力を伸ばし、一時結果が危ぶまるほどであった。今年は、フランス、ドイツなどEU圏で大統領選挙や国会議員選挙があり、右翼政党の台頭が問題となっていてファシズムの再来が危惧されるほどである。
 
 このような投票結果に現れる政治的カオス現象は、民主主義的投票制度の弱点が露呈されたものである。十分意見を戦わせ、有権者が正当な判断を持って投票すれば問題はないだろうが、現代のような矛盾に満ちた不安定な社会情勢の下では、煽動に惑わされる人が多い。意見が二分されても、勝った方が全権を握りうる制度は拙い。多数決制民主主義の限界と弱点が、典型的に現れたのが今度のアメリカ大統領選挙である。この不合理な制度は改めねばならない。 

民主主義先進国では、議会運営がマンネリ化、形骸化して議会と民意が乖離している。選挙制度も問題であるが、選出された議員が民意を反映しないから、議会に対する期待が薄れて、投票率の低下はひどくなっている。
 日本では小選挙区制のために、僅かの支持率の差でも2/3絶対多数を獲得できる。小選挙区制は勢力拮抗のときにカオス現象が起き易い制度である。勝った方は、ほぼ半数の反対意見があることを考慮して政策を決めるべきだが、往々にしてそのことを無視して我意を押し通す。それを世論が抑えられないと、権力者の横暴がまかり通り易い状況が生まれる。 
     
 トランプ氏は脅迫的言動で批判者や反対派を押し潰そうとしている。これは最も典型的な悪い例で、非常に危険な状況が起こりつつある。
   
とにかく、多数決ですべてを決め、反対派や少数派の意見が無視される投票制度は危険であり、議会制民主主義が正当に機能しなくなる。この欠点を改める制度を工夫せねばならない。

 (注) カオス現象:
 非常に不安定な気象状態のとき、蝶の羽の一はたきが拡大されていって、遠いところで台風を起こすような現象(これを「バタフライ現象」という)をカオス現象という。小さな要因が無限に拡大されていって、大きな結果をもたらすことをいう。

かって、アメリカ大統領選挙でブッシュとゴアが争った時も、典型的なカオス現象である。最後に残った一つの州の僅か数百票の差でブッシュが勝ち、大統領になった。その直後にアメリカでテロが起こり、ブッシュは誤った情報をもとにした判断で(石油利権も絡んでいたが)イラクに侵攻した。その結果が中東アジアと西欧地域での大混乱とテロの蔓延である。もしゴア(平和的であり、環境問題にも取り組んでいる)が当選していたらこのような暴挙はなく、世界情勢は全く変わっていただろう。
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