科学・技術と自然環境について、教育を考える。
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本格的宇宙時代の始まり
本格的宇宙時代の幕開け


  いよいよ本格的な宇宙時代が始まった。 宇宙空間に人工基地を建設して長期間人が住める国際宇宙ステーションを造る計画が動き出した。その手始めとして「エンデバー」に日本の宇宙実験室「きぼう」を取り付けるために土井隆雄さんが行き、16日間の飛行でその任務を果たして3月27日にケネディ宇宙センターに無事帰還した。この成功は日本にとって、また人類にとって記念すべき第一歩である。今後宇宙ステイションの建設は急速に進み、多くの人々が長期間そこに滞在するようになるであろう。すなわち、宇宙コロニーの世界が築かれるのもそう遠くないだろう。それにしても、宇宙開発技術が人類の平和と幸福のために使われなければ、とんでもない禍をもたらす危険性があるから、喜んでばかりいられない。

 宇宙空間への進出は、人類が15、6世紀の頃に大洋に乗り出した「大航海時代」に次ぐ第二の航海時代の始まりだといわれている。新世界、未知の世界への進出は人類の開拓精神は好奇心と共に人類の本能として否定できないから、宇宙空間への航海は進化の必然的過程である。
 近代科学の誕生と産業革命以後、科学・技術の進歩によって人類は地上に大小様々な人工的空間を次々に作りつつある。現代では巨大ビル、地下街など人工都市を作り、また、各種乗り物も人工空間の一種である。それに伴って、地表はセメントとコンクリートによって塗り固められ、自然の姿はどんどん消えている。先進国の都会の人間はこのような人工空間での生活に慣らされて、都会人種は大地から乖離し非自然化されつつある。居住空間に限らず食べ物も季節を無視した人工栽培のものに慣らされてしまった。地球の自然環境破壊はすさまじい勢いで進み、人類生存を脅かすまでになった。

 宇宙ステーションは人工空間の最たるものである。したがって、宇宙空間に住むにはこのような人工的空間や食物の生活に長年かけて慣れていなければ、いきなり宇宙基地での生活には肉体的にも精神的にも耐えられないであろう。人類はこれまで徐々に人工空間の生活に慣れてきたが、それは期せずして宇宙時代の準備をしていたことになる。

 無重力宇宙空間での現象には何が起こるか分からない、予期せぬものがまだあるだろう。 宇宙ステーションでの生活は地上での常識を一つ一つ吟味し、反省することが迫られるだろう。それゆえ、これまでの人類の価値観や生き方を見直すための機会と情報・知識を与えてくれるかもしれない。同時に科学・技術の知識も再吟味せざるを得ない状況が起こるかもしれない。人知はまだまだ不完全・不十分であり、この複雑な自然界には人類の予測不可能なものがまだ無数にある。それゆえ、技術には必ず抜け穴があり、科学・技術の過信は危険であることを人類はこれまでに何度も経験している。

 宇宙空間での科学・技術の研究の意義についての議論のなかに、無重力状態は地上でも実現できるから、わざわざ巨費をかけて宇宙ステーションをつくって実験をする必要はないという意見もある。その指摘には一理あることは認められるが、一面的のように思える。短時間の無重力状態でできる実験はそれでもよいが、長時間の無重力状態では何が起こるかまだ予想できないことが沢山あるだろう。特に生命現象がそうである。予期せぬことが起こる可能性について思い出すのは、極低温での超伝導、超流動の発見である。極低温では分子・原子の運動が止まっていくから、当時の常識では温度を下げていっても何も新たな現象は起こらないだろうと思われていた。カマリン-オンネスが極低温での物質の性質を研究していたとき、そんなことを研究しても無駄だと批判されたそうでる。しかし、追求をやめなかった彼は、ついに超伝導、超流動という驚くべき現象を発見した。現代科学の力によって多くの予測が可能なことは素晴らしいことであるが、自然は無限に奥深く、人知はまだ浅い。 
 
 生物の発生、成長には重力がかなりの役割を担っている。細胞分裂によって同じ細胞ができるにもかかわらず、役割分化が起こり種々の組織に分化していくのは、発生途中の固体ないでの細胞の位置(内側と表面など)と重力の効果によるといわれている。それゆえ、生物固体の発生過程での重力の役割と影響を研究することは生命現象の解明に大いに寄与すると思う。

 宇宙ステーションでの面白い実験やアイデアを募集して、実行する計画がこれまでにいくつか実行され、今後も続けられるようである。その試みは科学研究としても価値あるものがでるだろうが、多くの人々に科学に興味を持たせることや、想像力ひいては創造力を育成するにも大変有効である。そこに夢をかけることは大変楽しいだろう。このような企画にもっと多くの青少年が参加することが望ましい。
 
 無重力あるいは弱重力下で生物の発育が可能ならば、将来宇宙ステーションで成長した人間の思考形式や感情・意志などが、地上の人間と異なるような事態が起こるかも知れない。もしそうならば、脳の機構の解明のヒントになるであろう。さらに、遠い将来には、それら新人類と地球上の人種との関係が問題となるであろう。
 いずれにせよ、無重力状態での生命の誕生は急速な進化(あるいは退化)が起こるであろう。古代に海から陸に生物が上陸したことで急激な生物進化が起こったように、環境の急激な変化は新種生物の発生に強い進化圧となる。

 人類の本能として無限の可能性を求めて宇宙空間へ進出することは必然的であるし、素晴らしいことである。人類がこの宇宙でどこまで進展できるか、そのこと自体がこの宇宙の進化にとって一大実験でもある。しかし、地球環境を破壊して住みにくくなったから地球外に脱出するというのであれば、「地球の使い捨て」である。そのような考えで宇宙へ進出してはならない。人類の母体は地球の大地であることを忘れてはならない。人類は将来、「地球の使い捨て」の思想で宇宙に出るのであれば、他の天体に次々にコロニーを造り、それらの天体を荒らしてまた使い捨てることになる。それでは人類は宇宙のガン細胞的存在となる。宇宙を汚さぬように細心の注意が必要である。
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