科学・技術と自然環境について、教育を考える。
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地球環境の異変について
地球環境の異変について

 地球温暖化の原因について、多量のCO2排泄が指摘されて定説になっている。だが、その説に対するいろいろな反論は後を絶たない。その中でも目を引くのは、昨年発表された赤祖父俊氏の論文である(「『金融財政ビジネス』:「止まった気温上昇CO2犯人説の真偽を考える」2009.11.)。彼は世界的に有名な地球物理学者であるから、その主張は大きな影響力を持つだろう。このまま無視できないと思う。

・赤祖父氏の主張 
 赤祖父氏は「大気中のCO2が急激に増加しているにもかかわらず、地球の平均気温の上昇は2000年頃から止まっている。これは実際に観測された事実である。しかし、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の研究者はその事実を無視し、一時的変動だと主張している。平均気温上昇の停止は、CO2による気温上昇を打ち消す理由があるからにほかならない。それは自然変動、すなわち小氷河期の回復に乗った準周期変動による可能性が大きい」と言って、政治・経済的背景を指摘すると共に、実際の気候観測データに基づき一般的見解を否定している。さらに、COPの会議など無駄だから止めるべきだ、日本のCO2削減目標はナンセンスだという。

 赤祖父氏のうな気球環境の専門家に、その分野の素人の私が反論することは困難であるが、「地球温暖化」だけを採りあげて、CO2増加のせいではないというのは一面的判断であって危険であると思うので、敢えてその理由と私の判断を述べることにする。 

・IPCC批判について
 赤祖父氏は、IPCCの報告は誤りであるといって、背後に政治的意図があるかのごとく批判している。しかし、千人を越すこの科学者集団は良心的科学者の研究組織と思う。IPCCの発足に当たって政治的問題があったとしても、これだけ広範囲の分野にわたり世界中の多数科学者を政治的意図で長年研究させ、都合の良い結論を出させることはできないと思う。

 IPCC報告が地球温暖化の原因をCO2にあると結論づけたことは、それなりの理由があるだろう。以前のこれまでのIPCCの報告は、結論をだすことに慎重で、表現に配慮していたようであるが、最近の報告では、温暖化とその原因についてはっきりと結論した。ただし、100年後の温度上昇予測については、不確定要素があることは赤祖父のいうとおり幅があるだろう。地球は複雑系であり、長期気象予報はまだまだ難しい。
 IPCCが、温暖化の研究に関する「学者としてできることは終わった。後は政策者の仕事である」といったとすれば、とんでもない発言と批判されても仕方がない、と赤祖父氏はいう。 さらに、温暖化防止の国際会議は意味がない、CO2削減は待ったなしの問題ではない、日本の25%削減政策は馬鹿げているというのも、同様に一方的偏見であろう。

・「温暖化」ではなく「気候異変」「環境異変」というべきだ
 地球温暖化にのみ目を向けて、温度上昇は自然変動のうちだとか、CO2増加と自然変動の両方だとかいって、CO2増加効果を論じていることがむしろ問題である。温暖化は進んでいると思うが、自然変動の要素がどれくらいかは明らかでない。これだけで確定的結論は出せないかも知れない。だから、他の現象にも目を向けて多面的に判断すべきである。
 地球は一つのシステムとして高度の複雑系であるから、多くの要素が複雑に絡み合って変化・発展している。温度上昇だけを問題にするのでなく、気象変動、海洋変動、氷河減退、砂漠化など総合的に研究して判断しなければならない。
 地球の平均気温の変化ではあまりはっきりしなくとも、気象異常は明らかである。激しい気温変化、梅雨期のズレ、集中豪雨、台風の発生状況の変化、他方では砂漠化の進みなどは、コンピュータ計算をしなくとも肌で感じうることである。さらに、エルニーニョの変化、海水の酸性化、海水の表面温度の上昇、海流変化、氷河の減退と深海水流の変化などいろいろな要因が絡み影響し合っている。(ヒマラヤ山脈の氷河は2035年までに消失するという警告は、科学的根拠の薄いインド科学者のコメントを載せたNGOの報告をそのまま引き写したということがわかり、IPCCは撤回し謝罪した。しかし、北極やヒマラヤの氷河がかなり減退していることは観測されている。)

 大気の温度変化についても、一様に上昇しているのではない。1950年以降、北極圏では100年あたり2.29℃も上昇したのに対し、赤道付近では1.25℃との観測データがある。つまり南北間の温度差が相対的に小さくなっている。これが大気の大循環を変化させているそうである。また上下方向では、CO2効果で地表では温暖化しているが成層圏ではむしろ寒冷化が進んでおり、大気全体としては実は温暖化も寒冷化もしていないそうである。そうならば大気が不安定となって対流活動がより活発化することになり、気候異変の原因となる。

 地球環境の異変はいろいろな所にでているから「温暖化」ではなく「気候異変」、「地球環境異変」の問題として多面的に捉えるべきである。

・手遅れになったら取り返しはできない 
 だから、赤祖父氏のように「待ったなしではない問題」といって、CO2削減よりも温暖化についての研究に力を注ぐべきだといって、悠長に構えているのは危険であろう。
 コンピュータを使うまでもなく、経験的に分かる自然現象として明らかに気候異変は見て取れる。異変が決定的になってからでは、対策は間にあわない。相乗効果のために、ある変化が閾値に達するとカタストロフィックな変化が起こり、そのとき複雑系はカオス現象を起こし引き返しが効かない。巨大な玉が坂道を転がり落ちるように加速されていき止まらなくなる。

真の科学的判断は総合的判断による 
 科学史の教えるように、自然科学の説や法則の真偽は、一種類の実験や、一種類のデータだけで決定的なことは言えない。一つの理論をひっくり返すには、あるいは新たな仮説を承認し受け容れるには、多くのデータと多面的な綜合判断に基づいて問題点を絞り込み、最終的結論に到達するのである。
 まして地球のような複雑系の場合はなおさらのことである。地球の温暖化や気候異変はCO2によるものか否かは、平均気温の上昇のみ見て単眼的な判断ではなく、地球のあらゆる異常変化を基に多面的(複眼的)な総合判断が必要である。それが本当の科学的方法である。
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