東日本震災復興の理念とビジョン
東日本震災による壊滅的被害から復興する構想がいろいろ提起されだした。この復興は、元の状態への復旧ではない。それは同じ災害を繰り返さないための災害対策を施した新たな地域と街づくりというだけではなく、新たな社会構造と生活スタイルにまで及ぶものであるべきである。そのための基本理念と構想が必要であろう。阪神震災とは規模も質も違うので、復興の観点と方法は異なる。
敗戦後、日本は奇跡的復興を遂げたが、そのときの状況と現代の状態は全く異なるから単純比較はできないが、対比してみることは有益であろう。
(1)戦後の戦災復興の場合
国内状況:
敗戦で日本人は自身を失い意気消沈。
大都市はすべて消失。 原爆の洗礼を受ける。
衣食住すべて不足。働き盛りの男性が不足。
連合軍の支配下で限られた自由。
鎖国から開放去れて新たな世界が開かれ、閉塞感から脱出した喜び。
精神的支柱:
戦後民主主義の導入。思想・信条の自由(条件付だったが)。
自由・人権の保証と戦争放棄の平和憲法のもとで新た復興の息吹。
目標:
政治・経済と生活の立て直し。復興から成長へ-豊かな生活を求めて高度成長。
資本主義制度を前提にした経済成長に歪みを生じた。
(2)今度の震災の場合
国内状況:
長期の平和時代が継続。経済、科学・技術先進国として物質文化に浸たる。
バブル崩壊後の永い不況下で格差の拡大。
政治経済の一極集中(東京中心)の歪み。国家財政の危機。
地方 主権、地方自治獲得の運動が台頭。
食料・資源・エネルギーの低自給率・外国依存。高齢化社会。
原発・地下街・超高層ビル-自然からの乖離、技術過信の危険性。
政治の貧困で自信と目標を喪失。教育・文化水準の低下。
自主外交の貧困(アメリカ従属)。政治思想の貧困。
自民党を中心とした長期一党支配政治による議会制民主主義の衰退・マンネリ化。
政・官・財の癒着で国民は疎外されてきた。
大地震、大津波、原発事故と3重被害で未曾有の規模の。
(大戦では兵器として原爆被害、今度は平和利用の原発事故の被害をうけた。)
国際状況:
グローバル化時代。均一化の反面、国・地域の格差の進行。
交通・運輸、情報ネットの発達。多国籍企業・投機マネーの横暴。
東洋諸国(中国・インド・韓国)の成長・発展。米・欧・東洋の3極体制の中で日本は 埋没しそう。
資本主義経済制度のもとで規制のない市場原理優先-それに対する反省。
科学・技術は主に市場原理のもとでの金儲け競争に利用されている。
政治・経済の恒常的不安定(カオ ス的不安定さ)。
科学・技術革新、生産力増強の激しい競争-必要以上の開発競争でかえって無駄と浪費。
常に成長を前提とする経済制度-これは不自然・無理。
国際的地域紛争・テロの増大。核兵器削減・廃絶運動の高まり。
(3)人類が抱えている問題-各国共通(特に先進国)
人類絶滅の危機:環境破壊と原水爆戦争
地球環境異変(温暖化、汚染、自然破壊)からの保護。開発・発展の限界。
人工超過問題(すでに地球の収容力を超過)。人工増減の地域的不均衡。
資源・エネルギーの限界-獲得競争。食料不足と配分の不均衡-飽食と飢え。
労働と富の配分を均衡化し、格差是正の政治・経済制度が求められる。
このような情勢の中で、復興の理念とその精神的支柱を何に求めるか、またその目標をどこに置くかが問われている。社会構造、生活スタイルを変更して、新たな日本社会の構築が望まれる。それには大きな発想の転換による復興構想が必要である。
ただし、このグローバル時代には、その構想は日本国内だけに閉じない問題もあるので、克服すべき課題も多い。
(4)今度の復興構想で考慮すべき点
・精神的支柱
すべての国民が平和で文化的生活を享受できる社会、人権を尊重し格差のない社会を築く。
明るい展望の持て る未来社会を!
それには自然災害を人災にしない万全な対策が不可欠。
平和憲法、優れた科学・技術、日本文化の誇りを持って文化国家の建設。
世界平和と文化に貢献できる日本主導の外交を。
・一極集中を止めて地方分権
東京都と地方の政治的・経済的格差を減少するため。
自然災害による大被害を避けるため。
・自然災害対策を施した街づくり
災害列島日本では自然と巧く付き合う国造りが必要。
同じ災害を繰り返さないだけでなく、種々な災害を想定し科学・技術による評価を尊重 した対策を。
住・職の領域の配置を考慮。 地下街と超高層ビルを多く作らない。
・ 地方主権の地域活動が伸びる社会構造
地方の産業・文化を育成。
地域に根ざした産学協同:基礎理論と実学、科学と技術の正常な交流で独創的開発を。
地産地消で資源・エネルギーを節約:不必要な人と物質の移動を減らす。
・アジア地域との交流(外交、文化、貿易)重視の地域構想
太平洋側東日本の偏重から脱し、日本海側西日本を加えた均衡的地方都市計画。
・人間の生き方を変える文化の育成
無駄を省き、消費社会からの脱皮-「知足」の心。
精神的豊かさも求めて生活スタイルを改める-そのような教育を。
環境保全に寄与する地域の構造-自給率を高め、できるだけ地産地消を。
・貧富の格差是正の社会制度を
無規制の市場原理優先を止める経済制度を。
労働と富の配分の不均衡を是正 。
そのためには、資本主義経済制度を改めて新たな政治・経済制度が求められる。
・エネルギー源、とくに電力源を何に求めるか
原発の可否の議論は慎重に。
持続的自然エネルギーの開発を助長する国の支援は不可欠。
このような理想と要請を満たす社会を目指すための精神的支柱(哲学・倫理)、および政治・経済の理論が求められる。
(注)原発の危険性のみ強調すべきでない。原発に対する不信は、政府と電力会社・原子力産業との癒着により、安全対策手抜き、事故隠し、情報非公開の体質ができた。原発推進政策により、原子力産業は「負んぶに抱っこ」で甘やかされて、傲慢になった。批判するものは干され、御用学者・技術者を使って「安全神話」を作った。その体質を抜本的に変えねば、日本の原発の安全性は保証されない。だが、適切な体制と政策のもとで、科学・技術開発により安全性はかなり改善されると思う。原発の是非については根本的に検討し直す余地はあるだろう。
東日本震災による壊滅的被害から復興する構想がいろいろ提起されだした。この復興は、元の状態への復旧ではない。それは同じ災害を繰り返さないための災害対策を施した新たな地域と街づくりというだけではなく、新たな社会構造と生活スタイルにまで及ぶものであるべきである。そのための基本理念と構想が必要であろう。阪神震災とは規模も質も違うので、復興の観点と方法は異なる。
敗戦後、日本は奇跡的復興を遂げたが、そのときの状況と現代の状態は全く異なるから単純比較はできないが、対比してみることは有益であろう。
(1)戦後の戦災復興の場合
国内状況:
敗戦で日本人は自身を失い意気消沈。
大都市はすべて消失。 原爆の洗礼を受ける。
衣食住すべて不足。働き盛りの男性が不足。
連合軍の支配下で限られた自由。
鎖国から開放去れて新たな世界が開かれ、閉塞感から脱出した喜び。
精神的支柱:
戦後民主主義の導入。思想・信条の自由(条件付だったが)。
自由・人権の保証と戦争放棄の平和憲法のもとで新た復興の息吹。
目標:
政治・経済と生活の立て直し。復興から成長へ-豊かな生活を求めて高度成長。
資本主義制度を前提にした経済成長に歪みを生じた。
(2)今度の震災の場合
国内状況:
長期の平和時代が継続。経済、科学・技術先進国として物質文化に浸たる。
バブル崩壊後の永い不況下で格差の拡大。
政治経済の一極集中(東京中心)の歪み。国家財政の危機。
地方 主権、地方自治獲得の運動が台頭。
食料・資源・エネルギーの低自給率・外国依存。高齢化社会。
原発・地下街・超高層ビル-自然からの乖離、技術過信の危険性。
政治の貧困で自信と目標を喪失。教育・文化水準の低下。
自主外交の貧困(アメリカ従属)。政治思想の貧困。
自民党を中心とした長期一党支配政治による議会制民主主義の衰退・マンネリ化。
政・官・財の癒着で国民は疎外されてきた。
大地震、大津波、原発事故と3重被害で未曾有の規模の。
(大戦では兵器として原爆被害、今度は平和利用の原発事故の被害をうけた。)
国際状況:
グローバル化時代。均一化の反面、国・地域の格差の進行。
交通・運輸、情報ネットの発達。多国籍企業・投機マネーの横暴。
東洋諸国(中国・インド・韓国)の成長・発展。米・欧・東洋の3極体制の中で日本は 埋没しそう。
資本主義経済制度のもとで規制のない市場原理優先-それに対する反省。
科学・技術は主に市場原理のもとでの金儲け競争に利用されている。
政治・経済の恒常的不安定(カオ ス的不安定さ)。
科学・技術革新、生産力増強の激しい競争-必要以上の開発競争でかえって無駄と浪費。
常に成長を前提とする経済制度-これは不自然・無理。
国際的地域紛争・テロの増大。核兵器削減・廃絶運動の高まり。
(3)人類が抱えている問題-各国共通(特に先進国)
人類絶滅の危機:環境破壊と原水爆戦争
地球環境異変(温暖化、汚染、自然破壊)からの保護。開発・発展の限界。
人工超過問題(すでに地球の収容力を超過)。人工増減の地域的不均衡。
資源・エネルギーの限界-獲得競争。食料不足と配分の不均衡-飽食と飢え。
労働と富の配分を均衡化し、格差是正の政治・経済制度が求められる。
このような情勢の中で、復興の理念とその精神的支柱を何に求めるか、またその目標をどこに置くかが問われている。社会構造、生活スタイルを変更して、新たな日本社会の構築が望まれる。それには大きな発想の転換による復興構想が必要である。
ただし、このグローバル時代には、その構想は日本国内だけに閉じない問題もあるので、克服すべき課題も多い。
(4)今度の復興構想で考慮すべき点
・精神的支柱
すべての国民が平和で文化的生活を享受できる社会、人権を尊重し格差のない社会を築く。
明るい展望の持て る未来社会を!
それには自然災害を人災にしない万全な対策が不可欠。
平和憲法、優れた科学・技術、日本文化の誇りを持って文化国家の建設。
世界平和と文化に貢献できる日本主導の外交を。
・一極集中を止めて地方分権
東京都と地方の政治的・経済的格差を減少するため。
自然災害による大被害を避けるため。
・自然災害対策を施した街づくり
災害列島日本では自然と巧く付き合う国造りが必要。
同じ災害を繰り返さないだけでなく、種々な災害を想定し科学・技術による評価を尊重 した対策を。
住・職の領域の配置を考慮。 地下街と超高層ビルを多く作らない。
・ 地方主権の地域活動が伸びる社会構造
地方の産業・文化を育成。
地域に根ざした産学協同:基礎理論と実学、科学と技術の正常な交流で独創的開発を。
地産地消で資源・エネルギーを節約:不必要な人と物質の移動を減らす。
・アジア地域との交流(外交、文化、貿易)重視の地域構想
太平洋側東日本の偏重から脱し、日本海側西日本を加えた均衡的地方都市計画。
・人間の生き方を変える文化の育成
無駄を省き、消費社会からの脱皮-「知足」の心。
精神的豊かさも求めて生活スタイルを改める-そのような教育を。
環境保全に寄与する地域の構造-自給率を高め、できるだけ地産地消を。
・貧富の格差是正の社会制度を
無規制の市場原理優先を止める経済制度を。
労働と富の配分の不均衡を是正 。
そのためには、資本主義経済制度を改めて新たな政治・経済制度が求められる。
・エネルギー源、とくに電力源を何に求めるか
原発の可否の議論は慎重に。
持続的自然エネルギーの開発を助長する国の支援は不可欠。
このような理想と要請を満たす社会を目指すための精神的支柱(哲学・倫理)、および政治・経済の理論が求められる。
(注)原発の危険性のみ強調すべきでない。原発に対する不信は、政府と電力会社・原子力産業との癒着により、安全対策手抜き、事故隠し、情報非公開の体質ができた。原発推進政策により、原子力産業は「負んぶに抱っこ」で甘やかされて、傲慢になった。批判するものは干され、御用学者・技術者を使って「安全神話」を作った。その体質を抜本的に変えねば、日本の原発の安全性は保証されない。だが、適切な体制と政策のもとで、科学・技術開発により安全性はかなり改善されると思う。原発の是非については根本的に検討し直す余地はあるだろう。
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