科学・技術と自然環境について、教育を考える。
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大阪府の教育改革?-「教育基本条例(案)」
大阪府の教育改革?-「教育基本条例(案)」                  

 大阪府の橋本知事が「教育基本条例」(案)を府議会に提案され、その内容は「教育の政治的中立」を侵す可能性があると、目下大きな問題となっている。

 橋本知事が代表をつとめる「大阪維新の会」が府議会で多数を得ているので、「維新の会」を動かして、その「教育基本条例」を可決しようとしている。大阪市議会にも同じ条例を提案したが、「維新の会」が少数のために先月否決された。

その「教育基本条例」(案)の主な問題点は下記の通りである。
・教育目標:実現すべき教育目標を知事が設定する。 
・校長・副校長:任期付き公募制とする。
・職務命令:職務命令に5回、同じ職務命令に3回違反した教職員は免職。
・人事評価:教職員を相対評価で評価し、最低評価(全体の5%)が2回連続すれば免職 を含む処分対象にする。

 今の教育界や教育委員会には改善すべき問題が多くあると思う。教育委員会が十分機能しておらず、その存在意義が問われたこともあった。しかし、橋本知事が教育委員会に不信を持ったきっかけは、全国学力調査の大阪府の成績が全国平均を大きく下回ったので、市町村別成績結果を公表するよう圧力をかけたが、ほとんどの教委は「過度の競争を煽る」、「現場が混乱する」といって従わなかった。知事は業を煮やして教育委員会を罵倒し、「成績公表・非公表をするか否かは予算をつける指標となる」と脅迫めいたことまでいった。 知事と維新の会の教育目標は「国際競争に通用する人材を育てる」ことであり、そのためには教育の複線化による格差教育も辞さないという。人間にはそれぞれ個性があり、学問、芸術、スポーツなど得意とするものが異なるから、教育を受ける権利の機会均等が保証されれば、平等画一教育が必ずしもよいとは思わない。だが、教育の成果は直ぐ目に見えるものでなく、その評価の仕方も画一的には決められない。教育に関する理念・哲学もなく、「成果主義」を目指して押しつけ的な教育行政には危険を感ずる。

 知事が教育目標を設定することになると、知事が変わるごとに教育目標が変わる可能性が高い。教育の理念・目標は長期的にしっかりしたものを定めるべきで、行政の長の考え方に左右されて変えるべきものではない。
 「教育基本条例」(案)の孕む危険性は、多くの関係者の指摘通り、戦前の反省に立った「教育の政治的中立」を否定するものである。知事が教育目標を設定すること、および職務命令に従わない者は免職処分にできるというのは、教育の政治的中立性を侵す危険性が強い。校長をはじめ教員の人事権に政治が介入しやすくなることである。教育界には現在でも上位下達の体質があり、下の者は上役の顔色をこれまで以上に窺うようになり、教育委員会を通して教育行政を一層管理しやすくなる。この条例は一つ間違うと、長年のうちに教育に大きな弊害をもたらす危険性がある。

 戦後の日本が守ってきた「政治的中立性」を大阪府の一知事の独断で破ることは許されないだろう。全国的な議論で決めるべきことである。大阪のこの教育基本条例は全国に影響を及ぼす可能性がある。

 この「条例案」の審議で、「大阪維新の会」の議員が質問した:「(教育には)府民の意思を反映した仕組みの機構が不可欠である。だが政治が教育に介入してはならないという主張の下で、(教育現場が)聖域化され過度に民意が遠ざけられてきたのではないか。」これは知事の持論「民意=政治家」選挙で選ばれた政治家は民意を体現している、を受けた発言であろう。だが、橋本知事は当選した前回の選挙で、このような教育問題を公約に掲げてない。選挙民は候補者個人の人格や考え方すべてを知った上で投票したわけではないから、全権を託していない。当選した者は「民意を体現」しているというのは思い上がりである。

 橋本知事は、当選以来、積極的改革路線で府の財政危機や腐敗行政を改善したと、高い支持率を保っている。しかし、知事の行政はかなり強引であり反発もある。特に、教育・文化に関しては、彼の見識と行政方針に強い批判的意見が多い。現に、府教育委員会委員(その中には知事自らの要請で就任した人もいる)は全員猛反対し、府庁出身の教育長を除く6人中5人は、この条例が可決されれば辞任するとまで言っている。教育は国家の根幹である。それゆえ、この重大な問題を橋本知事の一存で「私が民意」と言って進められては困る。現行教育には民意が反映されてないというのであれば、その問題点を明らかにし、それを如何に改善するかを、教育関係者、知識人を中心に府民を含めて広く議論をした上で決めるべきである。

 橋本知事は教育分野以外のところでも、これまで強引な上意下達的行政を行ってきた。彼の手法は府民の支持を得て世論調査で高支持率を保っているが、その体質はファッショ的なところが見られ批判も強い。かって小泉首相が巧みな言動で民意を引きつけ、高支持率を盾にファッショ的な強引さで「構造改革」を行った。その結果、経済的歪みと格差拡大で、国民はいまだに痛い思いをしている。橋本知事はその二の舞を大阪版で演じようとしているように思える。マスコミを巧く利用して支持を得る手法も両者に共通している。
 先日、橋本知事と教育委員とがこの「条例案」について討論会を開き、意見交換を行った。そこで知事は条例案の内容を緩める余地を認めたようである。ならば、提案を取り下げて、じっくり時間をかけて広く意見を聴取すべきである。
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