新刊予告
「物理学とは何かを理解するために-基礎概念の発展を追って」
菅野礼司・南原律子共著 (吉岡書店)2012年3月予定
表記の書を上梓することになったので、本書の目的を紹介する。
「まえがき」より
「智恵子は東京に空が無いといふ。・・・阿多多羅山の上に出ている青い空がほんとうの空だとふ。」 (高 村光太郎「智恵子抄」より)
「某科学者は日本には物理教育がないという。・・基礎概念・原理の上に組み立てられた物理学こそがほんとうの物理学だという。」
自然科学、特に物理学の理論は自然に関する知識や法則の単なる寄せ集めではない。基礎概念と原理・法則を土台として、その上に築かれた理論体系なのである。したがって個別の知識や法則を覚えて問題を解く技術を習得するだけでは本当の物理を学んだことにはならない。そのことに気づかせるのがほんとうの物理教育なのだ。
本書の目的は、物理学のもっとも基本的な原理と基礎概念について、その意味を考察し、ほんとうの物理学の理解につなげることにある。そこで、物理学の進歩発展に極めて重要な役割を果たしてきた物質と空間・真空概念の変遷を歴史的にたどることによって、自然の仕組みの本質を理解するための手引きとしたい。人類は古代から自然の成り立ちと仕組みについて、いろいろ思いを巡らせてきた。文明初期の乏しい知識のなかでさえ、想像力を働かせて素朴ながらも興味ある宇宙像を描いていた。「天地はどのようにつくられたのか」とか、「万物は何からできているのか」という問題を、古代から深く考え続けてきた。その想像力の広さと深さには驚嘆するばかりだ。人間ほど好奇心が強く、想像力豊かなものはないと改めて感心する。
自然の成り立ちや仕組みに関する知識の一番基礎は物理学である。なぜならば、宇宙の仕組みの根底にあってすべての自然現象を担っているものは物質と空間(真空)であり、それらの起源と存在様式、および運動・変化の法則を追究するのが物理学だからである。したがって、物理学の基礎となるものは、物質と真空・空間である。
この宇宙の成り立ちや仕組みを追究するということは、自然界を造っている物質とはいかなるものか、またその物質が存在する空間はいかにあるかを探ることであろう。たとえば、物質の起源は、根源的物質とは、宇宙は有限か無限か、そして空間は物質とは独立に存在するのか、空の空間(真空)はあるのか、というようなことである。
実際に、物質と真空・空間に関する物理学的概念の歴史的な変遷(進化)の過程は、「物理学の進歩・発展の指標」ともいえるほど重要なものである。何事もしっかりとした基盤が必要であるように、物理学の学習もそれと同じである。基礎を確立してこそ、高度な知識も正確に理解できるし、全体像が描けるのである。
そこで、物質概念(物質とは何か)と真空・空間概念が物理学の進歩とともにどのように変わってきたかをたどり、そして、現代物理学が到達した物質観と真空・空間観への道を追ってみよう。そこに展開される物質像と真空・空間像は、いかに複雑で内容豊かなものであるかを知れば、驚かれるにちがいない。
このような話は教科書には書かれてないが、それを知ることで物理学に対する新たな視点を得、理解の仕方が変わるであろう。また、それを通してほんとうの物理学とは何かを深く理解し、物理学の面白さを知るであろう。そうすれば、その先の自然科学の世界を想像し、ロマンをかき立てられるはずである。
目次
序章 はじめに1
物質とは? 空間とは? 1
物質と真空・空間概念のあらまし
真空は空ではない!
第1章 古代から中世までの空間と物質観
第1節 古代における物質と宇宙空間像
第2節 古代ギリシアの自然哲学:自然の中に原理を見る
第3節 中世から近代科学誕生の前夜まで:中世は暗黒時代ではなかった
第2章 近代科学の真空概念と物質概念
第1節 近代科学の基礎にある物質観と真空・空間概念
第2節 第1科学革命:ニュートン力学の誕生
第3節 電磁気学の発展史
第4節 真空を充たす媒質エーテル
第3章 第2科学革命の始まり-相対性理論-
第1節 アインシュタインの特殊相対性理論
第2節 一般相対性理論
第4章 現代科学の真空観と物質観-第2科学革命の完成-
第1節 量子論:物質概念と力学理論の革命
第2節 空でない真空
第3節 現代の物質観と真空観
終章 科学は永遠に終わらない-第3科学革命への道-
科学の第3革命:「発展・進化の科学」へ
「物理学とは何かを理解するために-基礎概念の発展を追って」
菅野礼司・南原律子共著 (吉岡書店)2012年3月予定
表記の書を上梓することになったので、本書の目的を紹介する。
「まえがき」より
「智恵子は東京に空が無いといふ。・・・阿多多羅山の上に出ている青い空がほんとうの空だとふ。」 (高 村光太郎「智恵子抄」より)
「某科学者は日本には物理教育がないという。・・基礎概念・原理の上に組み立てられた物理学こそがほんとうの物理学だという。」
自然科学、特に物理学の理論は自然に関する知識や法則の単なる寄せ集めではない。基礎概念と原理・法則を土台として、その上に築かれた理論体系なのである。したがって個別の知識や法則を覚えて問題を解く技術を習得するだけでは本当の物理を学んだことにはならない。そのことに気づかせるのがほんとうの物理教育なのだ。
本書の目的は、物理学のもっとも基本的な原理と基礎概念について、その意味を考察し、ほんとうの物理学の理解につなげることにある。そこで、物理学の進歩発展に極めて重要な役割を果たしてきた物質と空間・真空概念の変遷を歴史的にたどることによって、自然の仕組みの本質を理解するための手引きとしたい。人類は古代から自然の成り立ちと仕組みについて、いろいろ思いを巡らせてきた。文明初期の乏しい知識のなかでさえ、想像力を働かせて素朴ながらも興味ある宇宙像を描いていた。「天地はどのようにつくられたのか」とか、「万物は何からできているのか」という問題を、古代から深く考え続けてきた。その想像力の広さと深さには驚嘆するばかりだ。人間ほど好奇心が強く、想像力豊かなものはないと改めて感心する。
自然の成り立ちや仕組みに関する知識の一番基礎は物理学である。なぜならば、宇宙の仕組みの根底にあってすべての自然現象を担っているものは物質と空間(真空)であり、それらの起源と存在様式、および運動・変化の法則を追究するのが物理学だからである。したがって、物理学の基礎となるものは、物質と真空・空間である。
この宇宙の成り立ちや仕組みを追究するということは、自然界を造っている物質とはいかなるものか、またその物質が存在する空間はいかにあるかを探ることであろう。たとえば、物質の起源は、根源的物質とは、宇宙は有限か無限か、そして空間は物質とは独立に存在するのか、空の空間(真空)はあるのか、というようなことである。
実際に、物質と真空・空間に関する物理学的概念の歴史的な変遷(進化)の過程は、「物理学の進歩・発展の指標」ともいえるほど重要なものである。何事もしっかりとした基盤が必要であるように、物理学の学習もそれと同じである。基礎を確立してこそ、高度な知識も正確に理解できるし、全体像が描けるのである。
そこで、物質概念(物質とは何か)と真空・空間概念が物理学の進歩とともにどのように変わってきたかをたどり、そして、現代物理学が到達した物質観と真空・空間観への道を追ってみよう。そこに展開される物質像と真空・空間像は、いかに複雑で内容豊かなものであるかを知れば、驚かれるにちがいない。
このような話は教科書には書かれてないが、それを知ることで物理学に対する新たな視点を得、理解の仕方が変わるであろう。また、それを通してほんとうの物理学とは何かを深く理解し、物理学の面白さを知るであろう。そうすれば、その先の自然科学の世界を想像し、ロマンをかき立てられるはずである。
目次
序章 はじめに1
物質とは? 空間とは? 1
物質と真空・空間概念のあらまし
真空は空ではない!
第1章 古代から中世までの空間と物質観
第1節 古代における物質と宇宙空間像
第2節 古代ギリシアの自然哲学:自然の中に原理を見る
第3節 中世から近代科学誕生の前夜まで:中世は暗黒時代ではなかった
第2章 近代科学の真空概念と物質概念
第1節 近代科学の基礎にある物質観と真空・空間概念
第2節 第1科学革命:ニュートン力学の誕生
第3節 電磁気学の発展史
第4節 真空を充たす媒質エーテル
第3章 第2科学革命の始まり-相対性理論-
第1節 アインシュタインの特殊相対性理論
第2節 一般相対性理論
第4章 現代科学の真空観と物質観-第2科学革命の完成-
第1節 量子論:物質概念と力学理論の革命
第2節 空でない真空
第3節 現代の物質観と真空観
終章 科学は永遠に終わらない-第3科学革命への道-
科学の第3革命:「発展・進化の科学」へ
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