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またも不信を増す原子力委員会
またも不信を増す原子力委員会 

 福島の原発事故以後わずか1年余りで、あれほど批判された「原子力村」がまた復活したかと思われる状況が次々に起こっている。5月25日の朝日新聞によると、原子力委員会のなで原発推進派ばかりを集めて意見を聞く勉強会を秘密に20回以上も開いて、核燃料サイクル政策のあり方を議論したという。しかも、原子力委員会の小委員会が報告書案の元資料を電力会社などに見せて推進派に有利になるように書き換えていたそうだ。これには全く驚いた。事故以前はこのようなことは常時なされていたと想像されるが、このことはいまだに電力業界と原子力委員会の癒着ぶりが常態化していることを示すものである。藤村官房長官や近藤原子力委員長は言い訳はするが、反省がみられない。 

 日本の原発政策に関しては、当初から政府、官僚、電力企業の体質は国民の信頼を失うようなことを繰り返してきた。そして、3.11福島第一原発の過酷事故により、これまで手を付けられなかった「原子力村」の内幕、情報隠しや安全対策の手抜きなどが次々に暴露されて、原発政策に対する不信が一挙に噴き出した。彼らは批判意見を締め出し、仲間内の馴れ合い集団「原子力村」をつくり、そこで築かれ「安全神話」は崩壊した。その「原子力村」の腐敗振りは徹底的批判され攻撃の対象になった。にもかかわらず、ほとんどそのまま存続していたわけである。

 原子力政策や関連組織を根本から洗い直し、原子力村に荷担してきた原子力委員会、安全性委員会、安全保安院なども全面的に改組して、一から出直しすべきだという意見がでた。だが、政府も原発の関連組織を改組するといいながら、遅々として進まない。各種委員会・保安院の委員もそのまま居残り、裏で上記のようなことを続けている。根本的検討も組織替えもなされないまま、政府や電力企業は大飯原発の再稼働に向けて策動し始めた。大飯原発の安全審査はパスしたと政府はいうが、これではもう誰も信用しないだろう。

私は以前(1月)このブログで「不信を増す日本の原発政策」と題して次のように私見を述べた。“ 現在の科学・技術レベルを持ってすれば、原発の安全度を現状よりも格段に高めることができ、事故を防ぐことはできると、福島の事故の後でも思っている。それゆえ、直ちに「原発廃止」「脱原発」というのは早すぎる、原発政策と科学・技術的問題を一から徹底的に検討し直したうえで結論を出すべきだと。だが、その後の事故処理や安全対策の状況からして、原発政策の根本的検討と組織改革を日本で期待することは甘いと思うようになった。原子力安全委員会と原子力安全・保安院の組織とメンバーや電力会社の幹部がそのまま残っている現状では、事故原因の追及はまともにできない。今後の対策を決めても本質的には昔と変わらず、その報告は信用できない。その調査が始まる前から、すでに原発の継続維持・再稼働の声がでるようでは、原発反対、脱原発と言わざるをえない。今では「脱原発依存」に意見を変えたと。”

 今度の原子力委員会と電力業界との癒着ぶりを見ると、その思いを一層強くした。このような状態では、政府や電力業界が何を言っても、国民は全く信用しないだろうから、原発に関するすべての計画・事業は巧く進まないだろう。この根強い国民の不信を払拭しない限り、疑心暗記のために何をやっても反対される。まず、信頼を回復することが先決であるのに、次々に不信を積み重ねることが裏でなされている。国民の憤りはますばかりである。

  29日から国会で「原子力規制庁を設置する法案」の審議が始まった。4月中に発足する予定だった規制庁設置の議論がここにきて漸く始まったわけだが、それも大飯原発再稼働に向けての準備態勢を整えるためらしい。組織も旧態依然であり、原子力委員会、安全委員会、安全・保安院のメンバーは元のままで安全性の審査をしての原発再稼働は拙速であるとの批判をかわすためらしい。原発を推進する経産省から、安全性委員会や安全・保安院を分離して環境省の下(本当は政府から独立するのがよい)に移すのは当然であるから、この原子力規制庁案そのものは賛成である。そして原子力村も徹底的に解体すべきである。だが、政府のその見え透いた姿勢が問題である。さらに、推進派が多数を占めた原子力委員会における小委員会の上記の策動のように、推進派の委員のみを集めた秘密会議がなされるようでは意味がない。それでは組織替えも世論対策の体裁造りに過ぎなくなる。

 組織の運営はその構成メンバーに強く依存する、いやそれによってすべて決まるといっても過言ではない。委員長の人選方を変え、また、委員会の人員構成は賛成、反対、中立がそれぞれ3分の1づつとし、公開・公正な議論によって結論を出すようにすべきである。原子力に問題に限らず、ほとんどの公的審議会、委員会の構成は政府案に賛成の委員が多数を占め、反対・批判派は言い訳程度に僅か2,3人しか選ばれていなかった。それゆえ、結論は最初から決まっていた。

原発関連の組織替えも必要だが、委員の人選が大事であると、私はこれまで繰り返し主張してきた。委員の人選法が昔のままでは、組織の改革も「仏作って魂入れず」になる。
このことは原発に限らず、すべての委員会や機関についていえることである
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