科学・技術と自然環境について、教育を考える。
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金融資本市場の巨大化:「虚の市場」が世界経済を蹂躙
金融資本市場の巨大化:「虚の市場」が世界経済を蹂躙 

現代の世界経済システムは、大別して3つの部分系から構成されていると思う。生産・サービス業からなる実経済世界、実体を伴わない金融資本市場の虚の世界、インターネットによる情報世界である。これら部分世界はそれ自体が一つの複雑系をなし、それらが互いに絡んで高次の複雑系を構成している。その一つ、金融資本市場の虚の世界が巨大化し、本来の資本主義を大きく変質させている。それは資本主義の内部に生まれ、やがて資本主義を崩壊させるものであろう。
 世界経済は慢性的危機に陥っていて、そこから抜け出す道が見出せそうにないが、その危機の主たる原因は、この金融資本市場の巨大化にあるのではなかろうか。
 私は経済学の専門家ではないが、今の世界経済を見るとそのように思える。

貨幣の役割が変質 
世界経済の混乱と危機を招いた要因の一つに貨幣の役割の変質があるだろう。本来貨幣は商品売買の媒介役であった。それが起業のための資本となり、利潤を生むための資本蓄積が目的になった。これが資本主義経済であった。資本主義経済は、商品を造る生産業、商品を移動させる商業、およびサービス業から成り立っているはずである。これらは実質を伴う業種であるから「実の世界」を造っている。
 ところが、生産ではなく投資・投機によって「金が金を生む」ようになった。物の生産やサービス業による利潤追求ではなく、金を動かすだけの投機による金儲けの手談、金融業が大きく成長した。そして「金融工学」まで誕生した。昔からある株式・債券・金、為替相場などの投機はその走りであるが、さらにそれらの派生商品(ディリバティブ)が次々に創り出され、それが巨大化している。また、大量の食料・エネルギー・資源の相場を操り、正常な経済活動を攪乱している。これらは実体を伴わないバブル「虚の世界」である。しかも、貨幣の流動が国際的に自由になったので、インターネットを利用して巨大な投機資金が瞬時に世界を駆けめぐることの出来る仕組みになっている。それによって投機家は巨大な投機資金を動かし、世界経済を操っている。これが世界経済の不安定要因の一つであろう。

 資本主義経済制度では、企業家は余剰労働を搾取して金儲けをするが、少なくとも物を生産するなり、商業は物の流通を促すなりするから「実業」である。だが、金融業は資金を動かすだけで利潤を得る「虚業」であり、それは貨幣の役割を変質させる。虚業が主勢となって世界経済を動かすということは、資本主義の変質退廃であろう。
 貨幣の変質でもう一つ重要なことは「金本位制」の廃止である。もとは貨幣の価値を支えていたものは、金本位制であった。貨幣に対する信用の基礎であった金本位制の廃止は、商品売買の媒介としての貨幣の本質を失わせるものであろう。それに拍車を掛けたのが国際為替レートの自由化、変動相場制である。金本位制の廃止と為替レートの自由化によって、貨幣価値の基盤が失われた。頼るは信用のみである。

 アメリカのドルが基軸通貨となったので、ドルの信用が貨幣価値の支えであった。ところが、長年のアメリカの貿易収支の赤字、国家財政の赤字続きにより、いわゆる「ドルの垂れ流し」で、ドルに対する信用が次第に失われてきた。しかも近年には、低迷する景気を刺激するためと称して、アメリカをはじめ各国の金融緩和政策が金余り現象を生み、貨幣の信用はますます薄れてきた。今や貨幣の価値は幻像(バブル)になろうとしており、世界経済は砂上の楼閣である。その砂上の楼閣を揺さぶってさらに危うくしているのが、金融市場の投機マネーである。リーマン・ショックはその典型であろう。

 世界経済を危うくするもう一つの要因は、先進国における「国家財政の破綻」の恐れである。国家財政の累積赤字は、今や構造的なものであるが、その財政破綻にも金融資本が深く関わっている。国家財政が破綻すれば、その国の貨幣価値は一挙に失われる。(先に「国家財政の破綻と世界経済の危機」で詳しく考察した。)


金融資本市場が世界を制覇 
このように、基盤を失った貨幣が金融資本市場という虚の世界をつくりだし、「マネーゲーム」を始めた。アメリカのドル垂れ流し政策と金融緩和政策とによって金余り時代となり、金融資本市場が一層巨大化した。いまや、この虚の世界は、生産・サービスの実の世界を量的にも遙かに凌駕している。物を動かす貿易と違い、虚の世界の資金はインターネットによって瞬時に世界を駆けめぐることができる。それゆえ、金融資本市場で動く金額は世界のGDPをすでに遙かに超え、そして外国為替市場を流れる額は貿易輸出入総額の100倍以上になるそうである。    
 まさに「貨幣バブル時代」の到来だ。ドルの信用がなくなりつつあるので、貿易決済をドル以外の貨幣で済ますことが拡がりつつある。ドルもユーロも信用がなくなれば、貨幣のバブルが弾けて一夜にして世界経済は破綻する。

 物を生産して利潤を上げる資本主義経済の中に、このような虚の世界が力を得て経済を攪乱させるので、世界経済は一層不安定になっている。このまま進んだら、この虚の金融資本市場が世界を制覇するであろう(すでに制覇しているのかも知れない)。この現象は本来の資本主義経済制度の基盤が蝕まれ、資本主義が内部から崩壊して次の社会制度に移行しつつあることを示しているように思える。 

このような貨幣の役割の変質と、金融資本市場の巨大化によって、世界経済はバブルに包まれた空中楼閣と化しつつある。それゆえ、貨幣の機能を実のある制度に改めて、確かな基盤のある経済体制を作り直さねばならないと思う。そして、金融資本市場の活動を抑え、行き過ぎた投機を制限すべきである。
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