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ヒグス粒子の話
ヒグス粒子の話

 ヒグス粒子の発見の意義:標準理論の仕上げ、 それは新たな発展の始まり 

 (これは先日科学者会議大阪支部の学習会で話をした原稿である。以前をこのブログに載せた簡単な解説文と一部重複する。)

1.はじめに:画期的な発見
 
 その存在の検証が長年待ち望まれてきたヒグス粒子(スピン0のスカラー粒子)と認定できる新粒子がついに発見されたと、ジュネーブにあるCERN(欧州合同原子核研究所)が2012年7月4日に発表した。実験に用いられた加速器はLHC(Large Hadron Collider)と呼ばれる陽子ビームを正面衝突させる装置である。
 ヒグス粒子の存在については、長い間理論的な議論が続き、加速器による検証が試みられてきた。ヒグス粒子は、素粒子の世界での基礎的4つの相互作用(力)の統一理論の要となる重要なものである。それゆえ、ヒグス粒子の存否は、素粒子の標準理論にとって死活の鍵ともいえるもんだいである。だが、ヒグス粒子の質量が理論的に予言できないことや崩壊モードが多岐のために、その発見が遅れていた。
 統一相互作用が分岐する機構の決め手となるヒグス粒子の発見は、素粒子理論に取って画期的なものであるゆえに、莫大な研究費を投じ、数千人の科学者を動員して何年も掛けて追究してきたわけである。それだけにこの発見に携わってきた研究者の喜びは一入であろう。

2.相互作用の統一理論とは
 まず、基礎的4つの相互作用(強い力、電磁気力、弱い力、重力)は根本的には唯一つであったという相互作用の統一理論とは何か、そのなかでヒグス粒子がどのような役割を演ずるのか、その説明から始めよう。その一つの相互作用が破れて4つに分岐した
 素粒子の4つの基礎的相互作用は、元は区別なくただ一つの対称的な形式であった。だが、宇宙創生期にその統一相互作用の対称性が破れて強、電磁、弱の相互作用と重力に分岐したというのが、相互作用の統一理論である。その分岐の時間は宇宙誕生後ほぼ10-11秒以内である。
これら4相互作用はみなその性質が異なっているから、それ以前の素粒子論では、それら異種相互作用を別々に解明し、むしろ何種類の相互作用があるかを追究していた。それゆえ、1960年代に始また、この統一理論は相互作用に関する観点を逆転させたという点で、自然観の転換でもある。
 宇宙生成期の高温・高圧の火の玉が爆発した「ビッグバン」以後、宇宙は膨張して温度が急速に下がり始めた。その膨張過程で一つだった相互作用の対称的が、次々に破れて4種に分岐したとみなされている。その対称性が破れるときに、ヒグス粒子が不可欠な役割をする。その対称性の破れと分岐の機構をスカラー粒子(これがヒグス粒子)の存在を仮定して理論的に示したのがイギリスのP.ヒグスである(1964)。

対称性の破れ:真空の相転移
 ヒグス場といわれるスピン0のスカラー粒子には、荷電φ+と中性φ0の2成分がある。宇宙初期の超高温状態のときはヒグス粒子(φ0)のポテンシャルは(図a)のように、φのない状態(φ=0の原点)がエネルギーの最低の真空であった。宇宙膨張で温度が降下すると、2つのヒグス場の一方のφ0 のポテンシャルが(図b)のように変形したとすると、最低エネルギーは、原点ではなく、横軸φ0=±vの所になる。すると、真空は新たに最低エネルギー状態となったφ0 =±vの所に移る。どちらに移動するかは確率的偶然で決まる。いま、真空がφ0 =vに移動したとしよう。ということは、真空は空(φ=0)ではなく、至る所φ0が凝縮して「vだけ詰まった状態」ということになる。これを真空の相転移という。ちなみに、真空を埋めることのできる場は、スピンや電荷などの物理量を持たないものだけである。荷電ヒグス場φ+は電荷のために真空を埋めることはできない。


  ヒグスポテンシャルの図a)、b)はここには書けないので省略   

図.ヒグス場による真空の相転移:真空の対称性の破れ
(横軸はヒグス場の強度、縦軸はヒグス場のポテンシャル)

 この現象は、ヒグス場φ0が自発的に凝縮を起こして真空の対称性が破れたことを意味する。このように外からの作用によるのでなく、内部機構による対称性の破れを、自発的対称性の破れという。 vの値はヒグス場の凝縮度であり、真空の対称性の破れの程度を表す量である。vをヒグス場の真空期待値という。
 自発的対称性の破れの機構を理論的に示したのは南部である。

基本粒子とゲージ場
 宇宙を構成している基本的物質はクォークと軽粒子であるとみなされている。 
6種のクォークと軽粒子:(注)スピンはすべて1/2(単位はh/2π)
   第1世代 u,d(3色);e,νe
    第2世代 c,s(3色);μ,νμ
    第3世代 t,b(3色);τ,ντ
 これら基本粒子間に働く4種の相互作用を媒介するものは、ゲージ場と呼ばれる粒子である(場の量子論では、場と粒子は同じ)。

    強い力:色ゲージ場(8種)グルーオンg、  スピン1,  
    電磁力:電磁場      光子γ、     スピン1、
    弱い力: 弱ボゾン    W±,Z0    スピン1、
    重力 : 重力場     重力子G    スピン2、

 宇宙生成期には、これら物質粒子とゲージ場はすべて質量0であり、しかもそれぞれのグループに属する粒子は質的にも区別なく同等であった、つまり物質粒子グループとゲージ場グループとはそれぞれ対称的であったとみなされている。物質の属性を識別するのは、それぞれの相互作用である(相互作用が無ければ、物質の存在も性質も認識できない)。
ゲージ場が完全対称(区別なく同等)であれば、相互作用も完全対称的であるから、物質粒子も完全対象的になる。

ただし、重力場はスピン2ゆえ特殊なので、まずスピン1のゲージ場によって媒介される強、電磁、弱相互作用の統一理論が提唱された。それを大統一理論GUT(Grand Unified Theory)という。そのGUTはクォークと軽粒子を包括するものである。(その対称性モデルはいくつか提唱され、数学の群論でSU(5)、SO(10)などと表現される。)

3.相互作用の対称性の破れを引き起こすヒグス場
 このヒグス場の凝縮によって真空の対称性が破れる(真空の相転移)とき、同時に相互作用の対称性も破れて、分岐が起こる。最初、重力相互作用が分岐し、次にGUTの対称性が破れて異質の3種相互作用に分岐したと想定されている。そのGUT統一相互作用の分岐は何段階もの分岐を経て、最後は3種相互作用になったとみなされている。この分岐の機構には、ヒグス場が決定的に重要な役割を演じている。

対称性の段階的破れ:
 超対称性(4種相互作用の統一)→ 大統一対称性(強、電磁、弱力の統一)→ 弱電統一対称性→ 電磁対称性

弱電統一理論
 理論展開の歴史的な流れは、まず最初にGUTの一部である「弱電統一理論」に関するワインバーグ-サラム-グラショウ理論が提唱された(1967)。元は一つであった弱電統一相互作用(SU(2)×U(1)対称性)が分岐して、電磁力と弱い力になったというのである。その分岐のさいに、荷電ヒグス場と中性ヒグス場の一部が弱ゲージボゾンに取り込まれて、質量のあるWボゾンとZボゾンになり、電磁場と別れた(ヒグス機構という)。電磁場は質量ゼロのまま残った。弱ボゾンWとZは質量をえたために、弱い力は近距離力となり、力の強さも減少した。これが電磁力に比し弱い力が近距離で弱くなった理由である。(力の到達距離は、その力を媒介する粒子の質量にほぼ反比例する。)
そして真空中を埋めた中性ヒグス場vが物質粒子の質量を生んだ。(後述)

(注:通常のスピン1粒子の状態を表す成分は3である。ところが、質量0のゲージ場はスピンは1であるが、独立成分は2である。そのゲージ場が質量を持って3成分のスピン1粒子になるには、もう一つの成分を取り込まなければならない。その成分がヒグス場である。)

 弱電統一理論の正しさが、いろいろな角度から実験的に検証された。それ以来、ヒグス場の存在の可能性は非常に高くなり、その発見が待たれていたのである。

標準理論:GUT
 弱電統一理論が確立すると、強い相互作用を包含する大統一理論への期待は一層高まった。強い相互作用はクォークを結合し核子や中間子を作る力である。それは、グルーオンが媒介する力で、クォークの持つ3次元の「色対称性」(SU(3))を有する。
(注:u,dなどそれぞれのクォークは3種あり、赤、青、緑で表される。)
GUTの対称性(数学の群論の言葉で言うと SU(5)、SO(10))は、ヒグス場の作用で対称性が破れる。第1段階の破れで強い相互作用と弱電統一相互作用に分岐し、ついで第2段階で弱電統一相互作用が電磁と弱い相互作用に分岐したとみなされている。(強い相互作用は色対称性を保ったまま分岐。)それぞれの対称性の破れで別々のヒグス場が作用する。それゆえ、少なくとも2種のヒグス場が存在するはずである。 (GUTの対称性が、SU(5)の場合は2種、SO(10)の場合は3種。)

 GUTはまだ理論的にも、実験的にもまだ確立されていない。だが、相互作用の統一理論は魅力的なので、その正しさを信じて「標準理論」と呼ばれている。標準理論では、このヒグス粒子の発見で全種類の粒子が出揃ったわけだが、ヒグス場は少なくとももう一つある。

重力は3種の力と異質であり、重力場の量子化は困難でまだできてない。重力まで含めた統一理論の試みは、超対称性と呼ばれるものである。そのモデルとして紐(string)理論が有力視されているが、まだ未解決である。

4.物質粒子の質量を生んだヒグス粒子 
「相互作用の統一理論」が提唱されてから、素粒子の世界を理解する観点が大きく変わった。この観点は宇宙成生と宇宙進化の本質に関わることであり、自然観の転換であった。   
物質の質量の起源もその一つである。統一相互作用の分岐の過程でヒグス場が重要な役割を演じ、一部のゲージ場と物質粒子に質量を与えるのである。

 物質場(クォーク、軽粒子)とヒグス場の相互作用(湯川型相互作用)において、ヒグス場の一部、真空に縮退したヒグス場vが物質場に質量を与える。つまり、物質粒子が真空を運動するときに、ヒグス粒子がまとわり付いて動きにくくするわけである。ということは、物質粒子の質量の起源は真空を埋めたヒグス場の粘性抵抗のようなものである。
 物質粒子の種類によってその質量は異なる。その値は物質場とヒグス場の相互作用の強さfとヒグス場の真空期待値vの積fvに比例する。クォークは軽粒子よりもその値が大きいから質量が大なのである。

5.ヒグス粒子発見の実験

 実験装置
加速器LHCとそのエネルギー:
CERNにあるLHCは陽子と陽子を正面衝突させる加速器である。加速器の円周約27kmの地下のトンネルに設置。1009年から本格稼働。
陽子・陽子が衝突するときの重心系でのエネルギーは8Tev(Tev:1012電子ボルト)である。陽子質量は約1Gev(Gev:109電子ボルト)に相当。

実験グループとスタッフ: 
 世界の素粒子論研究者が集まりのべ約3000人。日本から110人がATLASグループに参加した(中心メンバーは東大の小林富雄教授、浅井祥仁準教授など)。
 陽子の衝突により発生する粒子を測定する検出器ATLASとCMSを用いた2組の実験グループ(ATLASグループとCMSグループ)が独立に測定し、同時に発見した。
日本の技術が貢献:ATLAS検出装置の建設、加速器の精密機器製作、コンピュータによるデーター解析。
 
ヒグス粒子の性質:
生成;陽子中のグルーオンにより作られるtクォーク対から、あるいはクォークから出るZ対やW対から生まれる、などなど。
質量;発見されたヒグス粒子の質量は~126Gev/c2である。
平均寿命;ヒグス粒子は不安定で、約10-23秒で崩壊する。
崩壊モード;ZZ、W+W-、γγ、q-反q対、など多岐

検出法:
ヒグス粒子が崩壊してできる粒子は、γを除き、すべての粒子は不安定で、直ちに崩壊するから、検出器で捉えるのはそれらが崩壊した粒子(孫粒子)である。
 今度の実験で捉えた粒子は2組のμ粒子対、およびγ対である。
  
        Z-→ μμ-(μ対) 
    H →                H → γγ (2個のガンマー線) 
        Z-→ μμ-(μ対)
 

 ATLASによる実験データー:横軸はエネルギー(質量)、縦軸はイベント数 (そのグラフはここには書けないので省略)

新粒子の同定
 陽子-陽子衝突によりいろいろな種類の粒子が多数発生し、飛び出してくる。そのなかで、2組のμ対(4個のμ)を検出し、それらのエネルギー・運動量を測定して保存則を満たす組だけを取り出す。その合計のエネルギーが同じ組の数を図のようにプロットする。その数がバックグラウンドより高い所があれば、そこに不安定粒子があることを示している。図では125Gevの所に山がある。その山がバックがラウンドよりも高いほど、粒子の存在確率が高い。 2γに付いても同様にする。
                 
 今度発見された新粒子が本当にヒグス粒子H0(φ0)であることが確定すれば、これで標準理論の基礎となる粒子は揃ったことになる。だが、残されたいくつかの問題がある。まず、125Gevの粒子は、どの段階の対称性の破れに関与するヒグス粒子であるかを吟味せねばならない。陽子同士の衝突で生成したのであるから、グルーオンにより生成された可能性が高い。すると、第一段階の強い相互作用の分岐に関わるものではないかと思う。だが、同定には崩壊モードも関係するから、慎重な吟味が必要である。

 ちなみに、標準理論を構成する粒子は17種類であると報道されているが、ゲージ場の光子(電磁力)、弱ボゾン(W、Z)、グル-オン(強い力)をそれぞれ区別するこの数え方からすれば18種類以上ということになる。

6.発見の意義と今後の問題
 これで、標準理論は確かなものと認められるであろう。
ヒグス場の質量:理論では質量を予言できなかった。125Gevという値は標準理論をさらに精密に仕上げるために重要なものとなろう。

 物質質量の起源は、これまで理論的に説明できなかった。真空に縮退したヒグス粒子によるという説明は、以前からの観点と全く異質のものである。それは物質観の転換でもある。
この発見を出発点として新たな分野への第一歩が踏み出されるだろう。次の問題は、重力まで入れた全統一理論の完成である。それは暗黒物質にも関連している可能性がある。それの理論ができたなら素晴らしいことである。
その全統一理論の対称性は、スピン1/2とスピン0の粒子を同一視した超対称性といわれるものである。その超対称性理論には、すでに発見されているすべての物質場とゲージ場の相棒として、それぞれの既知粒子とスピンが1/2異なる粒子が存在することになる。超対称性理論のモデルとして、超紐(superstring)理論があるが、問題が多く否定的意見もある。
標準理論の完成は、次の新たな理論への糸口になるかも知れない。

残された問題

1)標準理論では、対称性の破れは少なくとも2段階あるので、もう一種のヒグス粒子を発見する必要がある。もう一種のヒグス粒子を探索すると同時に、今度発見されたヒグス粒子の性質を吟味して、どちらの段階のヒグス粒子かを決めなければならない。 

 これらヒグス粒子の検証実験には、電子-陽電子衝突による実験の方がよい。陽子同士の衝突では余分な粒子が沢山発生するから、必要なデーターを選び出すのが大変である。その点、電子-陽電子衝突では余分な粒子の発生が少ないので、データーは綺麗にでるからである。

2)質量の大きさを与えるヒグス場と物質場の相互作用の強さ(結合定数)を決める原理がない。ゲージ不変性からはずれたヒグス場の相互作用を決める原理がいる。
 標準理論はすっきりとした理論形式にまだなっていない。

3)等価原理の不思議:ここで問題になるのは、物質の質量に関する等価原理である。物質の質量には2種類あって、ヒグス場の粘性抵抗によって生ずる質量は「慣性質量」である。それに対して重力を生む「重力質量」がある。「慣性質量」と「重力質量」とが等価(大きさが同じ)であるというのが「等価原理」であり、それは一般相対性理論の基礎原理である。
 この異質の2種の質量が同等であるという等価原理は、いかにして成り立つのか?この根拠を解明することが大きな問題である。重力場を含めた相互作用の統一理論が完成すれば、この問題は解決するか、少なくとも解明の手掛かりはえられるだろう。

4)相互作用の自発的対称性の破れ(真空の相転移)は、南部理論による。相互作用の自発的対称性の破れによって、質量0のスカラー粒子(スピン0)が創生される。これを南部-ゴールドストン粒子という。ヒグス場はその一種とみなされる。
 ヒグス機構ではヒグス粒子は虚数質量を有すると仮定される。その理由はまだ解明されてない。

5)自然界における対立と拮抗: 一般的に自然界の基礎的現象には、対立と拮抗という2つの傾向が見られる。すなわち、定常状態を維持しようとする傾向(慣性)とその定常性を破ろうとする傾向(作用)があり、両者の拮抗で現実の運動が決まるような機構である。その例は、力学運動における慣性と力、電磁誘導のレンツの法則(電流や磁場の強さを変化させようとすると、その作用を妨げる効果の発生)、熱力学における平衡移動の法則(状態変化を起こす作用を妨げようとする効果の発生:ルシャトリエ-ブラウンの法則)などである。これらの効果は、状態を変化させようとする作用に対して、その状態を維持しようとしてその作用の働きに抵抗する効果、すなわち慣性とみることができる。
 相互作用の対称性の破れにより現れるヒグス粒子(南部-ゴールドストン粒子)の発生は、平衡移動の法則の素粒子版である。なぜならば、統一相互作用の対称性が破れることに対する抵抗としてスカラー粒子(ヒグス場)が現れるのは、対称性が自発的に破れることに対する抵抗とみなせるからである。このスカラー粒子の発生はエネルギーの高い状態(励起モード)への飛躍であるから、元の対称性(低エネルギー状態)を維持しようとする傾向の現れと見られる。
 ちなみに、基礎的相互作用は弱いほど対称性が破れている。弱い相互作用は既知のすべての対称性が破れているのも、このことと関係があるであろう。

6)対称性はなぜ破れるのか:宇宙の創生期の自然界では、すべての存在は対称的であり、粒子の質量もゼロであるとみなされている。それが宇宙初期のビッグバン以後、温度降下とともに対称性が破れて、いろいろな性質が現れたと想定されている。その対称性の破れにより自然の多様性が生じる。自然界の複雑な仕組み(物質の多様性、階層性など)はその対称性の破れの結果である。元の対称性を保ったままならば、何の変哲もない一様な宇宙のままである。
 では、なぜその対称性が破れたのであろうか。その理由はまだ分からない。現在の宇宙における基本的法則として「エントロピー増大の法則」がある。この法則の本質的なところは、状態変化は確率的に起こりやすい方向に起こる傾向があるというものである。単純なものは取り得る状態の数が少ないが、複雑なものはバライアティーが多く取りうる状態数が多いので、物事の変化は複雑な状態の方へ移行する可能性(確率)が高い。対称性の破れはこれと似たところがある。
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