科学・技術と自然環境について、教育を考える。
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「少子化対策」への疑問
「少子化対策」への疑問 

日本の人口が現象し続けているので、それを憂う意見が多い。政府も「少子化対策」を打ち出している。その一環として「命と女性の手帳」を女性に配布する企画を立てたが、それに対する批判が出たために、配布計画を撤回した。この「女性手帳」の内容のことは詳しく知らないし、この企画についてコメントするつもりはない。それよりもむしろ「少子化対策」そのものに疑問を持っている。

 日本における少子化とそれによる人口の減少を問題にする前に、考えるべきことがあるだろう。
 まず第一に、生まれてきた人たちが、安心して生活できる社会にすべきである。働く意思のある者なら、すべて定職に就き一生安心して暮らせる保証のある社会を作ることが先決である。少子化対策は、幼児手当や保育施設だけのことではない。むしろ夫婦の生活が安定して子供を産める余裕があることと、生まれた子供の将来が安定しているとの見通しがあることが肝要である。これらの条件を満たす社会を築かずに、子供を生めというのは無責任である。現状は失業率の高止まりが続き、大学を卒業しても就職できず、正規社員になれない者が増えるばかりである。働く意思のある若者や再就職希望の主婦がスポイルされる社会では、子供を産もうという意欲は出ないだろう。

 かって、文部科学省は、科学・技術社会の将来像に基づく社会的需要の見透しもないまま(アメリカのまねをして)、突然大学院の定員を倍増する方針を決定し、大学に押し付けた。それ以前から学生の学力低下が問題になっていた。それゆえ、基礎教育もしっかりできてない学生を大学院生として大量に抱え込まざるをえなくなった大学教員は困った。大学院生の定員倍増に対して大学院教員の増加も予算増もなかった。その結果、大学院教育の質がひどく低下した。 そればかりでなく、博士過程を終了しても職がなく、博士浪人が急増して社会問題になった。折角の人材を活かせず、むしろスポイルさせている。現在も定職がなく非常勤でやっと生活を支えている博士は増え続けている。これも政府文科省の無責任政策を示す典型的な一例である。今の「少子化対策」を見ると、このことと根底で相通ずるものがあると思う。 

 「少子化対策」について考慮すべき次の課題は、日本を含めた世界の人口問題である。なぜ日本で人口増が必要なのか。その主な理由として挙げられているのは、若手が増えずに老人が増えると人口構成が逆三角形となって、生産力が衰退し税収も減って国力が落ちる。その結果、国家財政や社会福祉制度も維持できないとの危惧である。

 現代では、技術革新によって一人当たりの生産力はどんどん成長するから、人口減にもかかわらず国民総生産GNPは増大している。それゆえ、日本では物余り現象が起こって、物質的生活は豊になっている。(ただし経済的格差がひどく、富の偏在が問題であるが。)だが、グローバル化されたこの激しい技術開発競争社会では、人口減は先進国間の発展競争にも負けるとの危機感がある。この科学・技術の開発競争は企業戦略とともに、まさに国境なき「経済戦争」である。この状況が続けば、資本主義社会の歪みが極限に達し、資源・食料、環境問題などで人類の危機を招くであろう。それゆえ、人口増でこの競争に勝ち続けるよりも、狂った開発競争を是正するか、あるいはそこに巻き込まれない方法を考えるべきではないかと思う。 

 そもそも経済力の指標とされているGNPの定義と内容には疑問が提示されている。その国の人口を考慮せずに、国民総生産GNPを比較してもあまり意味がない。国内総生産(GDP)も本質的にはGNPと変わらないだろう。一人当たりの生産量、あるいは所得を問題にすべきである。それすらも国際為替基準がアンバランスなので今の比較法は疑問であるが、GNPやGDPよりはましだろう。
 人口にせよ生産力にせよ、その数値の意味を吟味せずに、数値のみに振り回されるのは止めるべきだ。

 日本の企業は景気後退で経営が怪しくなると、まずリストラといって正規職員の首を切り、パートタイムの非正規社員を増やすという手段をとる。 または、大企業は低賃金の発展途上国に生産工場を移転させる。それゆえ、国内の失業者が増え(失業率は常時7%以上)、技術者が育たないばかりか、優秀な技術者(定年退職者も含む)とともに優れた日本の技術が外国に流出した。人間を大切にせず労働者を使い捨ての品物のように扱う企業体質を改めて、人材育成を心がけるべきである。近年における日本の低迷の原因はここにあるとの指摘もある。それなのに少子化を憂え、人口増を目指すのは理解に苦しむ。生まれてきた幼児が立派な大人になえれる教育をし、その能力を活かして働けるような社会を築くなら、今の人口でやれるだろう。人口減少を憂えることはないと思う。  

 もう一つの深刻なことは世界の人口問題である。地球の環境問題を考えれば、世界の生産量をこれ以上増やすべきではない。世界の総人口はすでに地球の収容能力を超えている。2050年には人類の総人口は70億人になると推定されている。人口急増は主に発展途上国であり、先進国の人口は減少傾向にある。それゆえ、将来は先進国の国力は発展途上国に負けるとの危機感がある。しかし、世界の総人口増を抑え、さらに減少させる対策の方が必要である。
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