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異常気象とIPCC第4次報告
近年の「異常気象」とIPCCの第4次報告書


 国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、国連の研究機関として気象学者ばかりでなく、地球環境に関わる多方面の自然科学分野の科学者1000人以上の協力で地球気候変異の調査・研究を続けてきた。今年の報告は、その研究結果の第4次報告である。
 これまでの慎重な表現の報告と違って、今回ははっきりと気候変動の原因は人為的のものであると断定的に警告を発したので、これをマスコミが取り上げ注目を引いた。そこで、私たちの科学論研究会で是非ともその報告内容を専門家に詳しく解説して貰い、みなで議論する必要があると考え、岩本智之さん(元京大原子炉)にお願いした。

IPCC第4次報告は次に挙げる3部からなる膨大なものである
第1部:気候変化の物理科学的基礎(The Physical Science Basis) 
 第2部:気候変化の影響、適応、脆弱性(Impacts, Adaptation and Vulnerability)
 第3部:気候変化の緩和策(Mitigation of Climate  Change)
 
 この全部を一人で取り上げることは専門的観点からしても時間的にも不可能なので、第1部「気候変化の物理科学的基礎」のみに絞って解説して貰った。

近年の異常気象に付いて

 IPCC報告の前に予備知識として、近年の「異常気象」についての特徴と、気候変動要因の解説があったので、素人にも理解し易かったと思う。それによると、過去100年間に、地上気温は上昇し続け、日本とアメリカ付近では一層顕著である。(特に大阪の温度上昇率は世界平均の約3倍である。)地上とは逆に、成層圏では寒冷化が進み(南極の春で顕著)、これが気候不安定の要因の一つとなる。世界の海面温度も上昇している。世界の降水量に顕著な変化はないが、集中豪雨の頻度が増している。特徴的な現象として、欧州における猛暑(フランスで40℃以上が続き多数の死者)、フロリダ州での強大なハリケーンの上陸があったことなどが挙げられる。

気候システムとその変動要因は、
(1)気候以外の変化:太陽からの放射変化、大きな火山 の噴火、
(2)気候内部の変化:大気自身の変化、大気と海洋など の相互作用、
(3)人為的な影響:温室効果ガス(CO2、CH4な  ど)の排出、地表面状態の変化(都市化、森林伐採な  ど)がある。

 このうちの(3)人為的な影響が問題である。

IPCC報告の主要な結論は次のようになる:
・気候システムに温暖化が起こっていると断定。
・人為起源の温室効果ガスの増加が温暖化の原因とほぼ  断定。(第3次評価報告書の「可能性がが高い」より踏 み込んだ表現。)
・20世紀後半の北半球の平均気温は、過去1300年間 の内で最も高温。
・最近12年(1995~2006年)のうち、1996 年を除く11年間の世界の地上気温は、1850年以降 で最も温暖な12年の中に入る。

最近の直接観測の特徴として
 北極の温度と氷の変化;降水量、海洋塩分、風のパターンの広範囲な変化;干ばつ、豪 雨、熱帯性低気圧の強化など、極端な気象現象を挙げている。
 また、過去100年に世界平均気温が0.74℃上昇し、最近50年の上昇率は過去10 0年のほぼ2倍である。そして、化石燃料使用量とCO2 濃度の増加は極めて顕著であ る。その他、北極の氷・積雪面積の現象、氷河・凍土の減少(メタンガスを発生)などいろいろ危険な要因を挙げている。

今後の予測:
これらの観測事実をもとに次のような予測を行っている。
・2030年までは、社会シナリオによらず10年当たり 0.2℃の気温上昇、
・熱帯低気圧の強度は強まる、
・積雪面積や極域の海氷の縮小、海氷は21世紀後半まで に夏には消滅する可能性あり、
・大気中のCO2 濃度上昇により海水の酸性化が進む、
・温暖化により大気中のCO2 の陸地と海洋への取り込み が減少。

将来の気候変化に関しては、以下のような警告を発している。
・今後10年当たり約0.2℃の気温上昇が予想される。たと え、全ての温室効果ガスおよ びエアゾールの濃度が2 000年の水準で一定に保たれたとしても01℃の上昇と なろう。
・温室効果ガスの排出が現在以上の割合で増加し続けた場 合、さらなる温暖化がもたらされ、世界気候システに、 20世紀よりも多くの面で大きな変化が起こるだろう。

 このように、人類は確実に地球環境に悪影響を及ぼしているといえるだろう。人類はこのままエネルギー・資源を使い続けるならば、現状維持でもさらにひどい気候変異が起こるであろう。今よりもっと多くのエネルギーを使い温暖化ガスを排出し続けるならば、もはや引き返すことのできない破局に向かうであるように思える。その時、人類は自然から必ずしっぺ返しを受けるだろう。「あと10年、20年先にCO2何%削減」などと悠長なことはいっておれないだろう。

気象異変は人為によるとの結論に対して反論している科学者もいる。温暖化は地球の周期的気温変化の範囲であるとか、海水中CO2の濃度と表面温度の相関から人為によるCO2 排出が原因とはいえないというものである。また、大気中のCO2濃度増大と大気温度上昇の周期を見ると、気温上昇の次にCO2 濃度が増大しているという反論もある。

 しかし、地球の環境は、多くの微妙な要因が複雑に絡み合う「複雑系」であるから、一つの要因に基づく一面的な結論は出せない、そうではなく考え得る全ての要素を勘案して多面的・総合的に判断しなければならないと思うがどうだろう。観点を変えれば別の解釈も成り立つ場合がある。それゆえ、さらに広範囲の要因を勘案した総合的研究・調査が必要であると思う。

 報告者の岩本さんは次のように結んだ
  ”大きな災害をもたらした事象を「異常気象」と呼ぶなら、こうした事象は少なからず発生している、と言えよう。気象災害の頻度と大きさの増大には警戒を要する。寺田寅彦の警句を超えて、今や「災害は忘れずにやって来る」ようになった。
 その災害は、エネルギーを最も浪費する富者ではなく貧者、「北」ではなく「南」、強者ではなく弱者、そして子どもたちとお年寄りに集中する。”


報告を聞いたあとの討論で、多くの感想と意見が述べられた。
・これだけ多方面・多数の研究者が協力した調査・研究は 初めてで、成功したよき手本である。
・富者や生産者の多くは、口では判ったように言っても、 実際の行動は違う。だから、IPCC報告や京都議定書を生かすには、法律を作って縛らなければ駄目だ。
・科学者は、今から直ちに声を大にして訴えねばならない などなど。
 
このブログもその想いで書くことにした。
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