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政治におけるカオス現象-多数決制の危機
政治におけるカオス現象-多数決制の危機 

昨年2016年は世界の情勢が大きく舵を切る予兆の現れた年だった。その予兆とは、一つには世界政治の方向転換であり、二つには民主主義的多数決制への疑問である。
 それを示した代表的事象は、「EU(欧州連合)離脱」の可否を決定するイギリスの国民投票、およびアメリカの大統領選挙である。いずれも賛否相半ばするきわどい接戦であった。


 イギリスの「EU離脱」を決めた国民投票は、初期の予想を覆して、接戦の末EU離脱派が辛勝した。だが、開票後に離脱派のリーダーが、宣伝していた前言を翻すなどで混迷があり、さらにこの結果が世界の政治・経済に与えた影響の大きさに驚き戸惑い、英国民は後悔しているかのような状況も報じられた。投票をやり直せという運動も起こったほどである。
 イギリスのEU離脱は、EU自体の弱体化ばかりでなく、イギリス経済にとっても難問を抱え込んだことになろう。その影響は、今後とも世界情勢を左右しかねない。EU離脱の賛否は完全にイギリス国内を二分し、投票結果がいずれに転ぶかは一寸した風向き次第といえるほどであった。しかし、イギリス一国の中のわずかの意見差が、将来の世界情勢に与える効果は予測できないほど大きいだろう。EUがしっかり結束していて強力であればその反響は少ないが、経済的に弱体化している時期ゆえに、下手をするとEU崩壊を招く恐れがある。この状況はまさに「政治におけるカオス現象」である(注)。 
 
トランプ大統領の出現も、初期の予想に反した接戦の結果である。獲得代議員数にはかなりの差があるが、それは選挙制度によるもので、全国の投票数ではクリントン氏が僅かに多かった。この結果は国内の意見が完全に二分したことを示している。この選挙での逆転は、アメリカ国内で既成政党の政治への不信・不満が蓄積し爆発したと見られている。その言動にあれほど批判の強かったトランプ氏であるが、国内の不満を取り上げ極端なアジテーションで国民の心を掴んだわけである。この結果は選挙を通してのクーデター(あるいは一種の革命)である。トランプ氏とクリントン氏のいずれが当選するかで、アメリカの国情が、ひいては世界情勢までもがらりと変わるだろう。すでにトランプ氏の独断的政治方針、組閣人事に見られるように、世界の政治・経済が混乱する予兆は現れている。それゆえ、これも政治におけるカオス現象である。

 社会的カオス現象は、国内が二分されるなどして、背景の環境が不安定な状態にある時に現れる。僅かの意見差や擾乱が拡大されて非常に大きな効果をもたらす不合理な現象である。近年は経済格差の増大、政治的閉塞、テロなどで、全世界がが不安定な状態であるから、政治・経済的カオスは、全世界に及ぼうとしている。
 咋年はイタリアで憲法改正の是非を問う国民投票を12月実施 。上院の権限を弱めて事実上の一院制にすることで、政権与党は改革を進めやすくしようとした。レンツィ首相は憲法改正案は承認されると踏んで、否決された場合には辞任する意向を示していた。だが、予想外の景気減速や英国のEU離脱決定による衝撃などを背景に状況は一変し、否決された。オーストリアの大統領選挙では移民排斥の右翼候補が勢力を伸ばし、一時結果が危ぶまるほどであった。今年は、フランス、ドイツなどEU圏で大統領選挙や国会議員選挙があり、右翼政党の台頭が問題となっていてファシズムの再来が危惧されるほどである。
 
 このような投票結果に現れる政治的カオス現象は、民主主義的投票制度の弱点が露呈されたものである。十分意見を戦わせ、有権者が正当な判断を持って投票すれば問題はないだろうが、現代のような矛盾に満ちた不安定な社会情勢の下では、煽動に惑わされる人が多い。意見が二分されても、勝った方が全権を握りうる制度は拙い。多数決制民主主義の限界と弱点が、典型的に現れたのが今度のアメリカ大統領選挙である。この不合理な制度は改めねばならない。 

民主主義先進国では、議会運営がマンネリ化、形骸化して議会と民意が乖離している。選挙制度も問題であるが、選出された議員が民意を反映しないから、議会に対する期待が薄れて、投票率の低下はひどくなっている。
 日本では小選挙区制のために、僅かの支持率の差でも2/3絶対多数を獲得できる。小選挙区制は勢力拮抗のときにカオス現象が起き易い制度である。勝った方は、ほぼ半数の反対意見があることを考慮して政策を決めるべきだが、往々にしてそのことを無視して我意を押し通す。それを世論が抑えられないと、権力者の横暴がまかり通り易い状況が生まれる。 
     
 トランプ氏は脅迫的言動で批判者や反対派を押し潰そうとしている。これは最も典型的な悪い例で、非常に危険な状況が起こりつつある。
   
とにかく、多数決ですべてを決め、反対派や少数派の意見が無視される投票制度は危険であり、議会制民主主義が正当に機能しなくなる。この欠点を改める制度を工夫せねばならない。

 (注) カオス現象:
 非常に不安定な気象状態のとき、蝶の羽の一はたきが拡大されていって、遠いところで台風を起こすような現象(これを「バタフライ現象」という)をカオス現象という。小さな要因が無限に拡大されていって、大きな結果をもたらすことをいう。

かって、アメリカ大統領選挙でブッシュとゴアが争った時も、典型的なカオス現象である。最後に残った一つの州の僅か数百票の差でブッシュが勝ち、大統領になった。その直後にアメリカでテロが起こり、ブッシュは誤った情報をもとにした判断で(石油利権も絡んでいたが)イラクに侵攻した。その結果が中東アジアと西欧地域での大混乱とテロの蔓延である。もしゴア(平和的であり、環境問題にも取り組んでいる)が当選していたらこのような暴挙はなく、世界情勢は全く変わっていただろう。
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[] 2017/01/18(水) 15:09 [EDIT]

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