科学・技術と自然環境について、教育を考える。
  • 05«
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • »07
「非核3原則」と「武器禁輸政策」の見直し
「非核3原則」と「武器禁輸政策」の見直しは
 「核拡散防止条約(NPT)」と [核廃絶]に矛盾しないか
 

 以前から納得いかないものに「核拡散防止条約」(NPT)がある。NPTは核保有国を増やさないための国際条約として1970年に発効、95年に無期限延長された。昨年のNPTの再検討会議には核拡散防止と核廃絶の期待が高まった。この条約強化の運動と、核不拡散の努力に水を掛けるつもりはないが、NPTに対して私は疑念を抱いていた。そのような疑念は私だけでなくかなり広いと思う。


その理由:
 1.すでに核を保有している大国の特権を認め、それ以外の国の核保有は認めないとい  う不平等条約であること、
 2.事実上の核保有国であるインド、パキスタン、イスラエルの3カ国は非加盟、しか  もこれら3国の核保有を事実上認めているザル法であること、
 3.北朝鮮とイランの核保有には圧力をかけていること。
 このような核保有国の身勝手なザル法をなぜ作り、なぜ国際協定として世界が承認したのか不思議であった。核抑止力を暗黙のうちに認めて、ほとんどの核保有国は実際に使用することはない思っているからなのか。それに対して、北朝鮮とイランは何をするか分からないという不信感があるからなのだろう。それでも納得できないところがある。

 ところが、原子力産業の平和利用政策に長年貢献してきた知人から、「NPTの最初の目的はドイツと日本の核開発と保有を抑えるために作られた」のだと聞いて、なるほどと疑問の半分は解けた。核保有大国が目論んだ最初の目論みはそうだとしても、その後、NPTを巡る動きは変質してきた。この「不平等のザル法」を活かすには、「核拡散防止」よりも、むしろ運動の力を「核廃絶」に向けるしかないと思う。オバマ大統領の演説以来、核廃絶運動と世界平和の機運は高まっている。

 だが、核廃絶機運の状況に反する動きが日本に出てきた。それは、菅首相の私的諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告書である(近いうち首相に答申される)。そこには、「非核3原則の見直し」と、「武器輸出3原則下の武器禁輸政策の見直し」が言及されるそうである(7月27日朝日新聞)。

これまでの必要最小限の防衛力を持つとする「基盤的防衛力」を否定して、日米同盟の深化と日本の役割強化のために、この見直しが必要だということらしい。非核3原則(造らず、持たず、持ち込ませず)のうち「持ち込ませず」は「一方的にアメリカの手を縛ることになるから賢明ではない」、この見直しは「究極的な目標である核廃絶の理念と必ずしも矛盾しない」と判断しているそうである。

 これは菅首相の私的諮問機関であるから、その人選は首相の考えに近い人たちであろう。首相はその提言を参考にして、政府の今後の方針を決めるらしいから見過ごせない

 民主党政権の政策は急速に変質しているように思える。アメリカへの無条件追従を脱して、アメリカにもの申す政府を期待したが、逆に日米軍事同盟の深みに一層嵌り込みそうである。自公政権が「非核3原則」を破って、アメリカの「核持ち込み」を黙認し隠してきたことを批判して、民主党政権は秘密協定を明るみに出したばかりなのに、「持ち込み」を認めようというのだろうか。核兵器があれば、先制核攻撃を受ける危険性が高いことは常識である。

 最近の原子力政策にも問題がある。インドへの原子炉の売り込みに官民一体となって乗り出したが、それに対しても批判が出ている。NPTに加盟せずに核兵器を保有するインドに、NPTと非核3原則に目をつむって無条件で原子力産業を輸出すべきではない。平和利用に限るとの協定を取り付けるべきである。 

インドばかりでなく、中東に日本の原発を売り込むためのプロジェクトを民主党政権は官民一体となって立ち上げようとしている。近年、地球温暖化対策として原発が見直され、世界的に原子力開発とその売り込みが盛んになりつつある。今や原発は巨大輸出産業に成長している。原発の安全性と廃棄物処理をきちんとするならば、原子力発電に反対するものではない。だが、原発先進国アメリカ、フランス、カナダ、ロシアなどとの売り込み競争に後れを取らないようにと、急ごしらえで推し進める姿勢は危険である。核拡散や治安面での懸念もある地域への進出は慎重な対策が必要であろう。少なくとも原子力は平和利用に限定するとの協定を結んで輸出すべきである。

 原発についてのこの姿勢は、武器禁輸の見直しと底辺で通ずるものであろう。景気回復と財政立て直しのためなら何をしてもよいのか。

 日本は唯一の被爆国として核廃絶・不拡散を国是として原子力基本法や非核3原則を制定した。この方針を変え、また平和憲法9条の精神に反することでも押し進めていこうというのであろうか。外国に売られた武器は自衛のためばかりでなく、国際紛争のとき先制攻撃にも使われるだろう。原子炉が核兵器製造に使われる可能性は常にある。原子炉でも武器でも売った後のことはどう利用されるかわからない。

 「非核3原則」とアメリカの「核の傘の下」にいることの矛盾が指摘されている。日本は直接アメリカの核の傘下にいなければ本当に危険だとは思えない。国連を中心とする国際的な集団安全体勢は、必ずしも核の傘の真下にいなくともよい状況にあると思う。秋葉広島市長は、日本が核の傘から抜けることを提案するという。この声が拡がることを期待する。

 「核抑止力」の論理的矛盾と危険性はいろいろな角度から論じられてきた。危険性を孕む核抑止力に頼るのでなく、核廃絶こそ人類の進むべき道である。「核持ち込み」を許すことは「究極的な目標である核廃絶の理念と必ずしも矛盾しない」という諮問機関の報告書の根拠が分からない。少なくとも核不拡散に矛盾することは明らかであるから、核廃絶運動に背を向けることになろう。規制のない原発技術の輸出と武器輸出解禁の姿勢と合わせて、その判断の根拠は信じがたい。
スポンサーサイト
この記事へのコメント

管理者にだけ表示を許可する
 
Copyright © 2005 自然と科学. all rights reserved.